観光地のVR宣伝について(ツーリズムEXPO2017の感想①)

いまさらですが,行ってきたので感想をば.

ご当地袋からVRへ

数年前は,ゆるキャラをモチーフにしたA1サイズ(594mm✕841mm)くらいの紙バッグが,自治体ブースの宣伝ツールとしてたくさん配られてました.ツーリズムEXPOでは,毎回嫌というほどチラシやパンフレットを配られることで両手が塞がってしまうので,それを収納するツールとして重宝します.

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出典:PRプランナー 妹尾浩二の日記

自治体ごとに様々なデザインを施しているので,収集癖のある人にとっては他人が持っている袋を見つけることで,「あの地域のブースにも行かなきゃ!」となって誘客につながったりもしてたと思います.また,この袋を持った人が自宅に帰るまでのあいだにも,街行く人の目に触れるわけなので,歩く広告として機能していたわけです.

ところが,今年のツーリズムEXPOではこうした宣伝ツールは全く見かけませんでした.正直,チラシを自前の鞄にしまわなければならなくなってしまったので残念です.その代わりに台頭していたのが,今をときめくVR体験.みんなゴーグルを装着している光景は,なんだかシュール.

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出典:engadget

VRを使えば良いというもんでもない

百聞は一見に如かずということで,こうした技術の活用には一定の効果はあるんでしょうけど,いくつか問題点があるんじゃないかなと思いました.

  • まず,僕のように眼鏡かけてる人にとっては,眼鏡非対応のゴーグルは面倒くさいということ.
  • あと,ゴーグルをしている人がいまどの景色を見ているかが,スタッフも含めた周囲の人と共有しにくいということ.スタッフがしっかりとフォローして話しかけてくれれば楽しめるけど,他の来訪者対応に追われてしまっていてVRゴーグルだけが置かれている状態だと,独りで遊びに来た人間にとってはちょっと寂しいかもです.風景だけでなく,画面上や音声で解説を流したり,ストーリー性を持たせて場面転換させるような仕掛を入れたりするところまでできればいいのにな,と思いました.景色の美しさを知ってもらうことを入り口にすることは大事やけど,その先を用意しておかないと,観光資源はすぐに消費されて終わってしまうという問題の象徴的な現場だったとも言えます.
  • そして,VRコンテンツにはさきほど紹介した「ご当地袋」のような広告効果は無いということ.ブースに来てゴーグルを覗いてくれた人にしか,その価値を100%で理解してもらえないというのは,大きな違いです.もし,「ご当地袋」の予算を削ってVRへ回しているのだとしたら,ただただ業者に踊らされて流行りものに飛びついているだけで,どこの自治体も広告戦略を持ててないんじゃないかなぁという印象を持ちます.

そう思うと,VRゴーグルで景色を見てもらうよりも,手持ちのスマホに360度画像をダウンロードしてもらったほうがいいんじゃないかと思います.Youtubeで見れるので,アプリ入れなくてもQRコードだけで誘導できるはずで,予算も大幅に圧縮できるはずです.

たしかに臨場感ではゴーグルに劣ってしまいますが,見えている景色を周囲の人と共有できるし,帰宅後も他人へシェアできるので情報の拡散が期待されます.どれくらいの人が閲覧したのかのデータもとれるので,マーケティング的も有効です.

あと,眼鏡したままでも見れる.

 

VRの真骨頂は空想の現実化

余談.

これまでにも何度か主張してきたことですが,僕はいつか「誰かの夢を旅できる時代」が来ると思っています.VRはそのための技術であって,いま使われているような現実空間を遠隔で体験するという使われ方は,発展途上での応用でしかありません.現実には無い世界が創造されることで,観光市場は爆発的に広がります.土地がなくても,ディズニーランドみたいなテーマパークを電脳空間上に無数に作ることができるといえば,そのインパクトの大きさは想像できるんじゃないかと思います.

現実世界にあるものをアピールするための手段としてVRをうまく活用することを考えることもいいんですが,むしろVRは魅力的な観光資源を新たに創り出すためのツールとして考えたほうが,生産的ではないでしょうか.