DMOの財源論/これ以上京都に観光客は必要か?
今日は台風ですが、京大主催の観光に関する公開勉強会に行ってきました。
- オーバーツーリズム研究で有名な北海道大学の石黒先生
- 観光地経営の第一人者 セントラルフロリダ大学の原先生
- 合法民泊で有名な株式会社百戦錬磨の上山(かみやま)社長
- 民泊条例や宿泊税を担当している京都市役所の福原部長
の4名によるゲストトークを聞いていて思ったことを書きたいと思います。
観光を考える定例シンポジウム(第6回)「これ以上京都に観光客は必要か? DMOの観光開発に果たす役割」 — 京都大学
おもに語られたのは、DMOのあり方とオーバーツーリズムについてです。
DMOの財源論
バルセロナのDMOの予算規模は70億円にのぼり、観光振興において絶大な影響力を持っているそうです。その6割は観光案内所等における物販によるもので、観光税からの収入は全体の1割程度。ただし、DMOが助成する旅行商品には税金が投入されているので、そこまで財政的に独立しているわけではない模様。
→DMOは税金に頼らない経営をしないといけないという意見がありますが、
DMOに税金が投入されていること自体は、問題の本質ではないと思います。
むしろ、税金を活用していないDMOは、DMOではない
といってもいいかもしれません。
税金漬けが問題になるのは、その税金が住民からしか徴収されておらず、
DMOの集客事業の成果と税収が連動していない状態である場合です。
なぜなら、DMOが集客しても、その恩恵によって住民税が増えるとは限らず、
いずれ人口減少に伴って住民税は減り、DMOは財政破綻してしまうからです。
たとえ税収が増えたとしても、DMOの財源になるまでの過程が複雑すぎて、
大抵は住民福祉やインフラ整備に充てられてしまい、
DMOの財源としての根拠は薄く、すぐに剥がされてしまうことになります。
一方で、宿泊税などのカタチで、住民以外も納税者化し、
その観光地の経済圏が行政区という地理的な枠組みから脱却できていれば、
DMOの財源が税金だけで構成されていても問題にはなりません。
観光客にとっても住民にとっても事業者にとっても公共性が高く、
市場原理に任せて直接受益者負担でビジネス化するのが難しいような課題を、
行政区ではなく観光客目線でのエリア単位でもって、
宿泊税や会費制度などの間接的な財源調達による事業運営で
解決するということがDMOである
と、今日自分のなかでの定義が更新されました。
DMOの究極の事業ドメイン
これを突き詰めていくと、最終的にDMOがたどり着く事業ドメインは、
以下の3つなんじゃないか、とも思いました。
これらは、観光客、住民、事業者のいずれにとっても公共性が高く、
DMOとして直接収益を上げて独立採算をとることも難しく、
ステークホルダーから、サブスクリプションモデルで資金調達して
実施するべき事業だからです。
これ以上京都に観光客は必要か?
あまりこのテーマについて深く議論されることはなかったので、以下は持論でしかありませんが、
高単価・長期滞在で京都に対する理解度の高い観光客なら必要
ということに尽きると思います。
まずは、ハイエンドな顧客体験とは何かについて研究し続けることです。たぶん、顧客と直接コミュニケーションをとる機会が多いサービス形態を増やすことだと思います。なぜなら、機械化できないサービスほど人件費が発生して、単価が上がるから。つまり、コンシェルジュやガイド人材を増やすということになると思います。
あとは、「一見さんお断り」を科学的に再現することです。つまり、紹介制のファンクラブのようなものを作って、会員しか体験できないコンテンツを用意し、理解度を高めていってもらえるようにするということ。
これは、初心者を排除するということではなく、常連になるつもりもなく1回限りで去っていくような人をなるべく減らす、ということです。ゲーミフィケーションですね。