Wantedlyに学ぶDMOの本質的な課題

いま、最もアツい就職支援サービス「Wantedly」のCEO仲(なか)さんのお話を聞いたので、そこから思ったこと。

Wantedlyなビジネスモデル

Wantedlyが従来のサービスと異なるのは、提供している価値の源泉が口コミによって成り立っているところです(本人談)。

初期の就職支援サービスは、求人情報をひとつのWEBサイトに集約し、広告で求職者を呼び込むことでマッチングを成立させていました。その結果、情報量が増え、利用者のニーズも多様化するようになると、検索エンジンの性能がモノを言うようになります。

しかし、検索機能にも大差が無くなり、オススメの検索結果にうんざりし始める人が出てくるようになったことで、本当に信頼できる情報は信頼できる人から仕入れる、需要者同士のネットワークを重視するという、共感型のビジネスモデルに注目が集まっています。

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これは、就職支援サービスだけでなく、旅行業界にもだいたい当てはまります。旅行代理店による窓口店舗型(JTB等)に始まり、オンライン化(るるぶ等)、広告モデル化(じゃらん等)、本格的なOTA(Expedia等)、これらを比較検索するメタサーチモデル(trivago等)と進化し、口コミ型(Tripadvisor等)に行き着いていると言えるでしょう。

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少数精鋭 vs 雇用維持

こうした共感型のビジネスモデルを生み出すためには、ビジョンの明確さと、それを実現するITスキルが重要です。逆にいうと、それ以外は優先されないともいえます。なので、能力が足りない人が切り捨てられることは否定されません。というか、事業の立ち上げのためには無駄を減らさざるを得ない(もともと資本主義はそういうもの。草の根的なボランティア活動よりも、得られた収益を慈善活動に寄付するほうが早い、とも、仲さんは主張していました。)

一方で、「雇用を維持することも企業による社会貢献のひとつ」という伝統的な主張があります。日本の会社が正社員を解雇しないのは、いまだにこの根強い考え方が背景にあり、労働基準法によって労働者が守られているためで、理屈として間違っているわけではありません。(仲さんは「擬似的社会主義」と表現していました)

しかし、能力に見合った仕事や、成長できる環境を提供できていないのであれば、むしろ社会に歪みをもたらしたり、労働者の可能性を奪ったりしているという見方もできます。そして、これが当てはまるケースは、世の中のニーズが多様化し人工知能に奪われる仕事が増えるに連れて増えていくと考えられます。なので、Wantedlyのようなビジネスモデルが支配する世の中はそう遠くない未来に訪れるでしょう。

DMOの組織矛盾と対策

上記の話自体は、別にWantedlyに限ったことではなく、もはや一般論といってもいいと思います。ここであえてこの話を取り上げたのは、地元の観光協会が担うことが多く公務員的な組織風土であるDMOが、マーケティングやプロモーションなどの尖った人材を雇用することに難しさを感じているからです。

これこそが、いまDMOの課題の本質だといってもいいと思います。現時点で、これに対する明確な答えを持ち合わせているわけではないのですが、とりあえず今僕が意識していること(すぐにできそうなこと)は、

  • ビジョンを掲げること
    観光庁ガイドラインは目標設定ばかりが強調されているけど、その前提となるビジョンをどう作るかが重要
  • 経理処理・予算編成などのマニュアル整備
    マーケティング本来の顧客データ分析よりも、まずは内部データの分析をしないと、マーケティングにどれくらい投資できるかがわからないので

です。

マーケティングするためには、マーケティング以外のことから始めないといけないのがもどかしいですが、それがほとんどのDMO候補法人が直面している現実であり、それはそれでやりがいのある仕事だと思います。そして、これを乗り越えることで、専門人材が地方の既存組織のなかでも活躍できる環境を作っていきたいなぁと思います。