同じ地域に複数のDMOは必要か?

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京都にDMCを名乗る組織が登場

近畿日本ツーリスト登録商標として持っている「DMC Japan」が、12月12日から京都で立ち上がるみたいです。立ち上がるといっても、新たに法人ができるわけでも、事業内容が変わるわけでもなく、これまで旅行会社としてやってきたことのブランドとしてDMCDestination Managemet Company)というフレーズを利用しているというのが実態でしょうか。

訪日外国人向けサービス事業の拠点 “DMC Japan 京都”12月12日(月) 京都にオープン
http://www.knt.co.jp/kouhou/news/16/no043.html

もちろん、京都市内にはJTBやHISといった旅行会社が存在していますし、DMO(Destination Management Organization)に相当する観光協会コンベンションビューローもあります。DMC Japan 京都がこれらとどう差別化をして、協働できるのか、あるいは競合するのか、気になるところです。

DMOとDMCの違い

いろいろな記事や文献でDMOとDMCの違いが解説されています。国内におけるDMO提唱者である大社 充(おおこそ みつる)氏によると、

  • DMO=公共性重視(業界団体)
  • DMC=営利性重視(民間企業)

ということのようです(今日、たまたま講演を聞いてきました)

でも、ニセコ観光協会はDMOと言われつつ法人格は株式会社なので、営利企業なんですよねー。一方で、世の中には地域貢献を目的とした私企業であるNPOがゴマンとあるわけで、それはDMCなんだろうか、どうなんだろう、モヤモヤ。

 

僕の中でしっくりくるのは、

  • DMO=観光関連事業者(DMCも含む)のハブ組織。業界をまとめて、協調マーケティングやプロモーションを行う(つまり観光協会
  • DMC=新たな観光資源を作り出しちゃう会社であり、あくまでも単独のプレーヤー。

というすみ分けです。
理想的なDMCは、尾道の「ディスカバーリンクせとうち」です。
http://www.dlsetouchi.com/

さまざまなプロジェクトを立ち上げ、4年間で地域に新たな雇用を100人も増やした実績は注目に値します。

地域内におけるDMOの競合

近畿日本ツーリストのプレスリリースをみる限り、新しい観光資源を作るというよりかは、事業者と連携してプロモーションを行うということなので、DMOもしくはメディアに近い役割であるように思います。

もしそうだとすると、観光協会の役割と競合する可能性があります。同じ地域のなかでDMO的な組織が複数存在することは、いままで競争原理にさらされてこなかった観光協会などの行政系組織が成長するうえで歓迎するべきことです。

ただし、観光客などの地域外の人間からすると、複数のDMOが別々のコンセプトでプロモーションを行っている状況は、あんまり良くないですよね?

できれば、ひとつのDMOのなかで様々な企画を戦わせて、外部に発信するコンセプトは統一するほうがいいでしょう。他のDMOの発信内容を組み込んで、全体をデザインする主導権を取るGreater-DMO的な立ち位置に観光協会が立つというのも考えられなくはないですが、社会的に無駄なコストが発生してしまう可能性は拭えないです。

こんな風に旅行会社がDMCと名乗りつつDMO的な事業展開をしてきているのは、それだけ観光協会の組織経営が時代遅れで競争力が無いことを見透かされているからともいえます。まずは、彼らと同じ土俵で戦えるレベルにまで組織を近代化できるかどうかが、DMO候補法人として登録されている各地域の観光協会の喫緊の課題といえるでしょう。