DMOはどのように稼ぐのか?

JTB総研が国内のDMO候補法人の収益構造についての調査記事を発表されました。

日本版DMOはどのように稼ぐのか?~自律的・継続的な運営に向けて~」(2017/2/13)

これによると、観光協会などのDMO候補法人は、主な事業の内容によって大きく5つに分けられており、行政からの補助金に頼っている組織ばかりではないと述べられています。

収入構造の類型 定義 比率(法人数ベース)
行政連携型 国・県・市町村からの補助金が選収入の60%以上を占める 24%
バランス型 60%を超える収入源がなく、偏りが少ない 40%
事業運営型 自らの収益事業による収入が60%以上を占める 29%
指定管理型・
施設運営型
指定管理・施設運営による収入が60%以上を占める 4%
業務委託型 行政からの業務受託が60%以上を占める 2%
不明 1%

形成計画書から収入源が把握できるとは限らない

たしかに、自主事業で財源を賄っているところはそれなりに存在するとは思いますが、この調査の根拠となっている各DMO候補法人の形成計画における財源一覧において「収益事業」とされている金額が、必ずしも全て民間からの収入とは限りません。

というのも、収益事業のなかに行政からの委託費が含まれている可能性があるからです。行政からの独立性という観点で評価する場合、上記のような区分をもとした分析ではミスリードを招いてしまう可能性があります。

補助事業と委託事業の違い

たとえ形成計画の区分が正しかったとしても、その区分がDMOの性格を捉えるのにふさわしいかどうかは別問題です。とくに、補助事業と委託事業という区分については、注意が必要です。

補助金漬け」という言葉があるとおり、補助を受けている団体は補助が無かったら何もできなくなる、なんて批判があります。たしかにそういうケースもあるかもしれませんが、本来補助金とはその団体が自主的に行おうとしている事業に対する支援資金なので、その団体の自主性を尊重した仕組みです。

一方で委託事業の場合は、価格入札なり企画提案による競争が発生することが多いので、その事業に対して受託事業者は主体性を帯びやすいと考えられがちです。しかし、委託事業の実施主体はあくまでも行政側ですし、知財などの権利も行政側に残ってしまうので、受託事業者(DMO)側の主体性が補助事業よりも強いとは限りません。

大事なのは、補助に頼らないと成立しないような事業を採算が取れる事業になるように育て上げる努力をしているかであったり、DMOとしてやるべきだと考えている事業を選んで受託しているか、ということです。また、補助金漬けよりもタチが悪いのは、他の民間事業者と競合するような委託事業をいつまでもDMOが既得権益として抱えてしまうことです。

 分類 一般的なDMOの議論における位置付け 実際のところ(個人的な意見)
補助事業 行政に依存してしまうので、
減らしたほうがよい
DMOの主体性を尊重。補助金なしでも事業として自立させる努力をしているかが重要。
委託事業 競争にさらされているので、自律した組織経営につながる。 DMOが主体性を持てているとは限らない。
DMOに必要な事業をするうえでの財源として、行政からの委託費を利用できているかが重要。
一方で、既得権益化してしまうと、競争を阻害する要因にもなる。

補助と委託については、こちらの資料をご参照ください。

経済産業省 資料「委託費と補助金の違い

自主事業は、いずれ手放すべき

補助なのか委託なのかは大したことじゃないのはわかった。でも、自主財源を増やすことは大事でしょ?という意見も、DMOの議論におけるステレオタイプのひとつです。必ずしも間違いではありませんが、自主財源が多ければいいというものでもありません。

そもそも、DMOのミッションは、観光客を呼ぶ持続的なビジネスサイクルを作ることです。いくら自主財源の比率が高くても、その収益が既存の事業の維持のために使い果たされてしまっていたのでは、いずれサイクルが破綻するときがやってきてしまいます。

たとえ自主事業の比率が減ろうとも、新たな補助事業を企画したり、委託事業を仕込んだりして、次に続く芽を育てることのほうが重要です。軌道に乗った自主事業は、よほどDMOでなければできない理由がない限りは、子会社化して配当収入を得られるようにするか、民間事業者に売却すれば良いんじゃないかと思います。

DMOの究極の事業形態

ICT技術が未熟な時代は、公益的な事業は補助金や委託に頼らなければ事業として成立させることが難しかったわけですが、ICT技術が発達するにつれて市場の失敗は減り、ソーシャルビジネスと呼ばれるようなビジネスモデルが勃興するようになってきました。つまり、公益性の高い事業であっても、いきなり民間企業がビジネスとして成立させやすくなる、ということです。

そうなると、どうなるか。
DMOとしては補助や委託を受けて自分たちで事業を担うよりも、ベンチャーキャピタルみたいに新たなビジネスアイディアを見つけてきて投資をしていくことを目指すべきではないかと思います。

ということで、JTB総研のコラムにある「DMOはどのように稼ぐのか」という問いに対する僕の回答は、「観光ベンチャー企業からのキャピタルゲイン」です。(もちろん、会費を集めてマーケティングやプロモーションを行う従来型の事業は、それでそれで残るという前提)

京都観光関連サイト(国内向け)を比較してみた

WEBサイトの分析はマーケティングの基本中の基本です。とくに、京都観光に関するサイトはうんざりするほど多いので、競合分析が非常に重要となります。

そこで今回は、関連するサイトを用途別に整理してみたいと思います。最近は、SEO(なるべく検索結果で上位に表示されるようにすること)よりも、SXO(検索した目的が達成されるようにすること)が重要視されるようになってきているので、ここの認識を共有しておくことが大事です。

観光分野における検索目的

Google Keyword Plannerで京都の旅行分野に関する検索ワードを見ながら、ざっと思いついた仮説を書き出してみました。よく、旅前~旅中~旅後の3段階でカスタマージャーニーを整理することが多いですが、メディアの場合はより上流の潜在需要を区別して捉えることが重要なので、旅外という区分を別に設けてみました。

行程 目的
旅外
  • 余暇の過ごし方にインスピレーションを得たい
旅前
  • 旅行はしたいけど、行き先は未定
  • 京都に行きたいけど、どこに行けばいいか分からない
  • 行くことを決めた場所について知りたい
  • お得なツアーを選びたい
  • 最適な宿を選びたい
  • 各所の位置関係を知りたい
  • 行く日の京都のイベントを知りたい
  • 行く日の京都の天候を知りたい
  • 京都の宿やガイドなどを予約したい
旅中
  • 今日、どんなイベントがあるか知りたい
  • 当日の緊急変更などの状況を確認したい
  • 京都の二次交通を調べたい
  • 京都の飲食店や観光スポットを調べたい
旅後
  • 行った場所について詳しく知りたい
  • 感想を行程を記録しておきたい
  • 欲しかったけど買わなかった商品について知りたい
  • お世話になった相手に連絡したい

これをもとに、「京都 観光」と検索したときに上位にHITするサイトを中心に分類していき、サイトの特徴やユーザー規模を比較してみたいと思います。ユーザー規模の把握は、Values社のemark+という無料サービスを活用しました。

取材重視型がバイラルメディアを駆逐するか?

旅行以外も含めた流行に関する情報を取り扱っているようなWEBサイトも含まれるので、把握するのが難しい反面、影響力が非常に大きく、売り手側も積極的にアプローチしていかなければならなくなってきています。いわゆるバイラルメディアというやつで、以前DeNA社が閉鎖に追い込まれたFind Travelもここに含まれます。

DMO自身が記事を書くかどうかは別として、ネイキッド記事(気づかれない記事)を増やしていくような仕掛けは考えていく必要があります。ともすればステルスマーケティングなんて批判されたりもしますが、気づかれることで嫌われてしまうことも市場原理には組み込まれているので、シンプルに良い記事を提供することだけを考えればいいと思います。(個人的には、ステルスマーケティングじゃなくてステルスプロモーションと呼んだほうがいいんじゃないかといつも思う)

ともあれ、京都関連の人気記事を持っているサイトをいくつかピックアップしてみました。

 

サイト名 概要
RETRIP 言わずと知れた人気サイト。あまり知られていませんが、募集型旅行サイトTrippieceが運営しているメディアです。
TABI LABO こちらも有名なバイラルメディア。一時に比べて元気が無くなったように思う。
SPOT コミュニティ・相談機能重視の旅行メディア。ユーザーインターフェースがややもっさいけど、投稿者の顔が見えて自分の足で取材している感じがするので、RETRIPよりも印象は良い。
PLAY LIFE RETRIP、SPOTの良いところを組み合わせたようなサイト。これからもっと伸びてくると思います。
キナリノ 他のサイトよりも上品な雰囲気のキュレーションメディア。情報量多めでガイドブックに近い提案型のコンテンツもあるけど、取材力はRETRIPとあまり変わらない印象。
TABI CHANNEL 他のサイトができていない地図情報とのリンクができているのは便利。
トラベル.jp ツアーやホテルの検索予約機能もある総合メディア。トリップアドバイザーに近い感じなので、バイラルメディアではないですが、他のサイトと似たような記事も載っているので。

めんどくさくなってきたので、あとはこちらを参考にしてください。

「旅行系キュレーションメディア(笑)」が多すぎるのでまとめてリストアップしてみた

で、一応emarks+で主要なサイトのPV数を比較してみました。RETRIP強し。

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ただ、各サイトでもっとも見られていると思われる京都記事のユーザー数で比較してみると、RETRIPよりもPLAY LIFEが上位に。(記事単位で比較できるのは、以下の3サイトだけだったので、あくまで参考値ですが)

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たぶん、京都観光に関する情報は氾濫しているので、より質の高いコンテンツが求められる段階にまで至っており、取材重視型のPLAY LIFEが伸びてるんではないかと思います。

公式サイトの人気は根強い

旅中向けのサイトもたくさんありますが、主要な5サイトについて集計してみました。やはり京都市公式サイト「京都観光Navi」のユーザー数が最も多くなっています。「京都 観光」検索するとトップに表示され、「オフィシャル」の文字が見えるというところに強みがあります。

ただ、7月だけは民間サイト「KYOTOdesign」にTOPの座を譲っています。これはおそらく、祇園祭関連情報の発信に差があるためではないかと思います。こうした弱点を補強しつつ、バイラルメディアからのリンクをうまく誘導していくことで類似サイトとの差を空け、観光客のニーズにワンストップで対応できるようにすることが、DMOには期待されます。

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京都観光の情報は、地元向けサイトのほうが面白い

普通に検索すると、上記で紹介したようなポータルサイトにたどり着いてしまいがちですが、実は地元民向けのサイトもいくつかあって、個人的にはコチラのほうが圧倒的にオススメだったります。

サイト名 概要
Kyotopi 要するに、このサイトが最強。ランキング記事なんて読んでる暇があったら、このサイトから行きたいところを探せばいいと思う。
Kyotrip ポータルサイトとしての設計は非常に優れているけど、読ませる記事系のコンテンツは持っていない。料金とかアクセス方法などの基本情報を調べるときに便利。
Kyochika 個人ブログ。京都以外の情報も多いけど、地元民ならではの情報発信は読み応えあり。
WebLeaf 京都人なら知らない人はいない月刊誌「Leaf」の電子版。便利さという意味ではKyotopiに負けるけど、デザインや企画も含めて楽しみたい人にはオススメ。

サイトのジャンルが違うので単純に比較できるものではありませんが、ユーザー数を比較すると以下のようになりました。Kyochikaは京都以外の情報も掲載されているので、そもそも読者層が広いことに注意してください。

僕が一押しのKyotopiは去年の後半に成長しています。時期的に、紅葉関連の記事でアクセスを稼いだのでしょうか。一方で、WebLeafがシェアを減らしています。Kyotripのユーザー数は全然伸びていません。消費者のニーズは基本情報ではなく、そのスポットの魅力を解説した記事だということがよくわかります。

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口コミサイトは4Travel

口コミサイトといえばまっさきにトリップアドバイザーが思いつきますが、グローバル対応になっているためなのか英語表記が混ざっていたりして若干ストレスを感じる人はいると思います。これに対して、「じゃらんnet」や「4Travel」は比較的日本人向けのインタフェースになっています。

それぞれ京都の観光地のランキングページを比較してみると、以下のような結果になりました(トリップアドバイザーは、京都のページに絞って集計できなかったので割愛)。4Travelのほうが人気はあるようですが、ここ最近はボリュームが減ってきているようです。もしかすると、ネット上の情報量が増えてきて要約された情報が好まれるようになってきたことで、口コミサイトよりもバイラルメディアへ需要がシフトしてきているのかもしれません。

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ただ今後、機械学習技術が発達することで口コミを簡単に要約できるようになってくると、口コミサイトの価値が見直されていく可能性もあると思います。口コミ解析については、近いうちに簡単な実例記事でも書いてみようと思いますので、乞うご期待。

まとめ

  • 京都観光について調べるならKyotopiが便利
  • DMOはこれらのサイトを活用した情報発信に取り組むべき
    (自前で素晴らしいサイト作らなくてもよい)
  • 口コミ情報の要約技術に注目

DMOのマーケティングに対する誤解

ここ最近DMO関連のセミナーとか会合に出る機会が何度かあって、そのたびに思うこと。

DMOのマーケティングは旅行者の分析が前提になりがち

どんな旅行者を呼びたいかターゲティングをしましょうっていうのは、それはそれでごもっともなんですが、最終的には各業界や事業者自身が考える内容にまで及んでしまって、どこまでやるの?って問題に突き当たってしまいます。

DMOは会員組織なので、むしろ大事なのは会員企業のロイヤリティを強化したり、会員企業を増やすために、地域内の事業者の分析を行うことのほうが前提ではないかと思います。あくまでもこの前提を支えるために必要な作業として、旅行者のマーケティングがあるのです。

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このような誤解が生じてしまう理由は2つ。

  • 旅行者のマーケティングをしたことがある人はそれなりにいても(旅行会社の社員など)、旅行者を相手にした事業者のマーケティング経験者(コンサルなど)は少ない。
  • 旅行者を相手にした事業者の種類が多いので、これらを網羅的に分析することは容易ではない。個別の業界について詳しい人はいるが、そういう人はその分野に集中したほうが自分の市場価値を高められることを知っているので、わざわざ儲からない観光マーケティングに手を広げるメリットが無い。

つまり、本質を教えられる人がそもそもいない、ということです。なので、事業者がDMOにお金を使ってくれるようになるためのカスタマージャーニーなり、ビジネスモデルキャンバスなりを地道に作っていくことが必要になるんじゃないかと思います。

マーケティングとプロモーションが混同して語られている

マーケティングは顧客を知る、ということです。顧客に情報発信したり、顧客を連れてくることとは違います。よく、「SWOT分析をする」だとか「デジタルメディアへシフトする」ということがマーケティング戦略の説明に挙げられること多いですが、それは本来はプロモーション戦略に分類されるものです。

もちろん、CMOと呼ばれる人にはマーケティングとプロモーションの両方が求められることが往々にしてありますが、これらを混同してしまってプロモーションのための戦略ばかり考えると、ターゲットを外してしまって失敗します。

まずは、「顧客をどのように分類する」だとか「知るための手段」「ポジショニング分析」という、狭い意味でのマーケティングについて考えることが優先されるのではないかと思います。

DMOのマーケティングの基本

ついでなので、DMOのマーケティングと言われたときに、自分だったらどんなことを伝えるか考えてみました。といっても、本質はフィリップ・コトラーSTP分析です。あえてSTP分析を行わずに、エスノグラフィ(顧客の行動を徹底的に観察する手法)的に顧客像を作り上げてみるだとか、手数を打ちまくって市場の変化を捉える、みたいな方法もあるんですが、メタ戦略の話をし始めると収集がつかないので割愛します。

顧客の属性の例

前述のとおり、DMOの顧客は「地域の事業者」と「旅行者」に大別されます。

まず試しに、地域の事業者がどのような項目で整理できるか、書き出してみましょう。

分類軸 項目例、分類の狙い
業態 宿泊、集客施設(寺社、博物館など)、飲食、小売、体験サービス・ガイド、交通、レンタル、製造、芸能
エリア 地域の実態に応じて分類
加盟 DMOにとっての既存会員かどうか
過去に加盟していたかどうか
他の団体に加盟しているかどうか
規模 売上高など(ただし、中小規模の事業者が多いため、定量的に把握することは簡単ではない)
メディア 自社ホームページやSNSを持っているかどうか
通販対応しているか
対象顧客 日本人、外国人、リピーターかどうか等
(後述の、旅行者の分類と揃えておくと美しい)
顧客単価 業界によって相場が異なるので、たとえば5つ星ホテルに宿泊する人が利用するかどうか、といった基準で分類
顧客回転率 DMOとしてプロモーション支援の考え方が異なってくるため
地元意識 創業年数や、資本の出処など

こんな感じで、最終的に提供したいビジネスモデルに影響するような要素を挙げていけば、どれについて調べていくのかの優先順位が自ずと見えてくるのではないかと思います。

つぎに、旅行者の分類についても整理してみましょう。

分類軸 項目例、分類の狙い
居住地 言うまでもないですね
ライフステージ 年齢よりも、親や子供の有無、同居状況などが重要
来訪経験 前回来た時期も重要
所得水準 世帯可処分所得を把握できればよいですが、必ずしも消費意欲と相関しないので注意。
宿泊施設や交通機関のグレードで分類するという方法もある。
宿泊有無 日帰りかどうか
メディア テレビ番組、利用アプリ、目にする広告、情報感度
認知 認知、ブランド連想、ロイヤリティ

一応こんな感じの客観的な情報で分類するのがオーソドックスですが、個人的にはもっと要約された属性で分類したほうが、ペルソナ(顧客像)を描きやすいんじゃないかと思います。というのも、最近の研究で旅行者は大きく6種類に分類されると言われていて、それ意外の情報はノイズでしかない可能性があるからです。

その研究結果による分類結果は以下のとおりです。必ずしも独立背反な分類ではないような気がしますが、地域として提供したいサービスやアプローチできるメディアを、この分類ごとに整理し、消費単価や市場成長性でポートフォリオを組んでしまうのが、近道ではないかと思います。

分類名 概要
Social Capital Seeker SNSへの投稿が好きな人。入念に計画を立てる。
Cultural Purist 文化的な体験重視。
Ethical Traveler 環境、ボランティア、健康、いわゆるロハスな人。
Simplicity Searcher 用意された旅行商品などを利用。ミーハー。
Obligation Meeter ビジネスやイベント目的。
Reward Hunter 自分へのご褒美。リッツカールトンとか星野リゾートに泊まってそうな人(笑)

個人的には、上記の6分類に加えて、Meeting Addict?(出会い中毒者)みたいな人たちがいるんじゃないかと思います。

知るための手段

顧客をどのように分類するかを決めたら、これにまつわる顧客情報を収集することになります。収集方法の選択肢は、以下のような感じで分類できるでしょう。

分類軸 項目例
頻度 単発。定期的。リアルタイム。
タイミング カスタマージャーニーのどの部分に注目するのか。
(いわゆる、旅前、旅中、旅後)
媒体 オフライン:対面聞き取り。紙アンケート。
オンライン:WEBアンケート。SNSWifi等のインフラ。
費用 無料、有料。
調査主体 DMO自身。地域の事業者からの報告。調査会社。
情報アクセス 内部限り。オープンデータ。

最終的には、リアルタイムなオープンデータを整備し、地域の事業者や市民が利用できるようにしていくことが、事業機会の最大化、投資の呼び込み、地域経済の成長につながります。

ポジショニング分析

ポジショニング分析においても、事業者にとってのDMOという目線と、旅行者にとっての旅行先という目線に分けて考える必要があります。

まず、事業者にとってのDMOのサービスを書き出し、それぞれについて想定されるライバルを書き出してみましょう。

サービス ライバル
旅行者への情報発信 旅行会社、出版社、WEBメディア、交通事業者、広告代理店
イベント企画・集客 イベント会社、広告代理店
調査・情報提供 業界雑誌、SNS、調査会社、行政
融資 銀行、投資会社
相談 コンサル、商工会議所、各業界の団体、ノウハウ本
認証・表彰 業界団体、行政、マスメディア
制度・規制 業界団体、行政

これらのライバルに対して、DMOが有利な点、不利な点を整理していけばOKです。事業者の業界によってはDMOの存在感も違うはずなので、可能であれば業界ごとに整理していけるとよいですね。

旅行者について考える場合は、さきにライバルとなる地域をいくつか想定したうえで、差別化できるポイントを整理する、という順序で考えたほうがわかりやすいかもしれません。ライバルとなる地域の選び方は、地域性・入込客数の規模・観光資源などの要素を網羅できるようにすると良いでしょう。

たとえば、京都の場合、外国人目線では「上海」「バンコク」「東京」「飛騨高山」あたりが候補です。日本人目線だと、居住地や季節にも左右されますが「金沢」「伊勢」「日光」「広島」あたりでしょうか。

比較する要素は、「アクセス」「費用」「自然」「夜景」「食事」「文化」「受入環境」など、既存の調査事例などを参考にすれば簡単に思いつくでしょう。ここで、事業者の業界分類ごとの充実度とかで比較してみたりすると、戦略に一貫性をもたせることができて美しいです。

まとめ

こういう内容で講演して、講演料で稼げるようになるのが、DMOの理想のひとつ笑

福岡県民の国内旅行先を月別に調べてみた

今回は、京都よりも西側のマーケット代表格となる福岡県民の2016年月別市区町村別の旅行先について、観光予報プラットフォームで集計してみました。慣れてきたのはいいけど、徐々にデータ量が増えてきて処理が重くなってきました。

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国内旅行先推移.xlsm

別府は2月が閑散期?

ゴールデンウイークの需要がそれほど大きくなく、7月~12月が高水準で推移しています。年の前半では3月にピークがありますね。スキー人口が少ないから、冬場に旅行しなくなるのと、3位にランクインしている別府市への宿泊者数が大きく寄与しているのが分かります。

4月は熊本地震の影響が大きいと思いますが、2月の需要が少ないのは意外です。寒いのが嫌であたたかい宮崎へ遊びにいく習慣でもあるんでしょうか。そのわりには8月も宮崎旅行は多いみたいです。

別府市の次に多いのは、なんと福岡県内の福岡市でした。県内からなら日帰りの人が多いと思っていましたが、想像以上です。この他にも、九州の都市が多数ランクインしています。やはり、本州から海を隔てて離れていることの影響は大きいですね。

温泉がない観光地は4~6月がチャンス?

京都への旅行は、4~6月と、9~11月が多くなっています。4~6月は地震の影響でしょうか?おでんが一番売れるのが寒くなり始める9月であるように、あたたかくなり始める4~6月に温泉需要が減って、消去法的に別ジャンルの観光地である京都が選ばれているのかもしれません。だとすると、温泉資源に乏しい京都は6月が閑散期なので、九州のマーケットに対しては紫陽花ゴリ押しが良さそう。

このあたりは、いずれ2015年のデータも追加して分析してみたいと思います。短いですが、今回はこのへんで。

石川県民の国内旅行先を月別に調べてみた

今回は石川県民の国内旅行先を観光予報プラットフォームで集計してみましたー。「関東への旅行」と「関西への旅行」が競合する地域という意味でのチョイスです。愛知県でも良かったんですが、愛知県はビジネス需要が強そうなので後回しにします。

前回は集計ロジック組むのに時間かかりましたが、一度データベースができれば、割りと簡単に他の都道府県に拡張できそうなので、少しずつ増やしていこうと思います。

ではさっそく、2016年の石川県民の国内旅行先は以下のとおり。(太字はBEST5です)

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国内旅行先推移.xlsx

全体の月別傾向

東京都民は8月が宿泊旅行のピークでしたが、石川県民は5月と8月になだらかなピークがあるようです。おそらく石川県のような分布のほうが一般的なんじゃないかと思います。

冬場に需要が落ち込むのは、やはり雪の影響で遠出を控えているのでしょうか。日帰りスキーに需要が移っている可能性もあるかもしれません。

旅行先の傾向

旅行先トップは大阪市のように見えますが、実際は東京です。集計の都合上、東京は特別区ごとに集計しているので、港区や中央区などを足し上げると圧倒的に東京23区が最多となります。東京都への宿泊者は毎月4~5万人で、浅草やスカイツリーがある台東区に宿泊している人が3000人前後なので、観光需要はそれほど多くないと考えられるでしょうか。

2位は大阪市で、シェアは5%くらいですね。東京同様ビジネス需要と、USJによる集客が牽引していると考えられます。2月の大阪市への宿泊者数が、石川県民全体の宿泊者数と比べて少なくなっているのは、スキー旅行にシフトしているか、もしくは加賀や七尾などの温泉旅行にシフトしているためでしょう。このデータは2016年のみの数値ですが、北陸新幹線開通以前であれば、もう少し大阪市のシェアは増えると思います。

3位は浦安市。ディズニーですね。

4位が京都市。紅葉シーズンに順位があがるのはわかりますが、5~7月に多いのは意外。修学旅行?やはり、冬場の集客が課題。

5位は加賀市。七尾やあわらなど、周辺の温泉地が上位に登場しているのが特徴。

石川県民は軽井沢への避暑旅行が好き?

あと気になるのは、中央区軽井沢が9月に急増している点。ここは軽井沢に注目して、軽井沢への宿泊者の推移を居住地別に見てみましょう。

当然、軽井沢への旅行は一都三県(東京、埼玉、千葉、神奈川)からが圧倒的に多いですが、富山や石川が上位にランクインしています。そして、一都三県や愛知、大阪は8月がピークになっている一方で、石川県は9月にピークが来ている点で特異です。(Googleスプレッドシートの機能制約のせいでわかりにくいですが、折れ線にカーソルを合わせると数値が表示されるので読み取れると思います)。

この理由を知りたいときに属性データとクロスした分析機能が貧弱なのが、観光予報プラットフォームの残念なところ。苦し紛れに、以下のような集計をしてみました。

8月は家族連れが多いようです。もしかすると、石川県民は別荘持ってる人が多いんでしょうか?首都圏のひとたちがいなくなって落ち着いた9月に宿泊単価が下がったのを狙って、北陸からの送客が増えているとも解釈できるかもしれません。

 

あと、3月に横浜への旅行が増えていたり、2月に福岡への旅行が増えているのも気になります。ジャニーズのコンサートの影響でしょうか。調べ始めるとキリがないので、横浜や福岡の分析をするときに、余裕があれば深掘りしてみたいと思います。

今回はこのへんで。

東京都民の国内旅行先を月別に調べてみた

旅行者数の分析はどうしても自分たちの町にばかり注目してしまいがちですが、当然旅行者は他の地域にも旅行しているので、市場シェアをどのくらい取れているのかを把握することが重要です。

これまでの統計では都道府県単位でしか把握することができなかったので、ちゃんとした分析はされてきませんでしたが、観光予報プラットフォーム(https://kankouyohou.com/)が整備されたことで、市区町村単位で分析することができるようになりました。

とはいえ、観光予報プラットフォームはデータをエクセルで出力する機能がなく、APIも配信していないという舐めた仕様なので、ちゃんと活用しきれていないように思います。そこで今回は、試しに東京都民が2016年のあいだに宿泊した場所について、月別にデータを抽出して集計してみました。

結果は以下のとおりです(太字は各月のBEST5)。

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元データ、ご自由にご利用ください
観光予報プラットフォーム_国内旅行先_東京都.xlsx

需要のピークは8月

東京都民は年間で延べ6,632万人が宿泊旅行をしています。最も需要が多いのはお盆シーズンの8月です。これが帰省需要によるものなら、5月(ゴールデンウイーク)や12月も多くなるはずですが、5月も12月も他の月と比べてそれほど多くはなっていません。おそらく、学校が夏休みに入ることで家族旅行が増えやすくなることが原因なのではないかと思います。

他の都道府県だとまた違う傾向があるかもしれませんが、もしこれが全国的な傾向だとするなら、季節波動を抑えるために、フランスみたいに学校の夏休み期間を地域別に分散させるような制度があってもいいんじゃないかと思います。

行き先No.1は大阪市

都民の宿泊旅行先No.1は一年を通して大阪市でした。このデータにはビジネス客も含まれていますし、大阪出身の東京都民による帰省需要も大きく、このような結果となっているのでしょう。

なお、上記の表には示していませんが、大阪市のなかでも此花区で宿泊している人が最も多かったことから、あきらかにUSJの需要が大きいことが分かります。3、8、9、12月の数値が大きいので、ここでも小中高生の休暇期間が影響しているように考えられます。

冬の京都が苦戦している理由は、ガーラ湯沢

第2位は京都市でした。意外と5月や12月の需要が大きくなっています。理由は謎です(笑)。もしかすると修学旅行が影響しているかもですが。

一方で、1,2月の宿泊者数が大きく落ち込んでいます。いまでこそ2月はレストラン・ウィンター・スペシャルと銘打って、食のキャンペーンを展開している京都市ですが、この時期はコンテンツが少なく昔から苦戦しています。

そうでなくても、この時期の東京都民は湯沢町への旅行が非常に多くなっており、スキー・スノボに夢中であることがよくわかります。やはり、新幹線で2時間以内に到着でき、駅からゲレンデが直結しているガーラ湯沢の集客力は半端じゃないようです。

冬の京都への旅行者を増やすためには、このスキー客層を無視することはできなさそうです。雪山も温泉も無い京都にとっては非常に難しい課題です。

昔ながらの観光地が上位に

名古屋、福岡、仙台などの主要都市はビジネスや帰省需要によるものだとして、それ以外で上位にランクインしたのは熱海などの伊豆方面と、日光・軽井沢などの北関東方面でした。どちらも景勝地や温泉で有名な昔ながらの観光地ですが、伊東や下田などの地域までランクインしているのは、関西人にとっては意外な結果でした。

ただ、それ以上に意外なのは、港区(東京都)がランクインしていること。さすがに、ラブホテル需要までデータには反映されてないと思うんですがねぇ笑

まとめ

  • 観光予報プラットフォームを使えば、市場シェアを把握することができる
  • 学校の休暇期間が与える影響は大きい
  • 京都の冬は、スキー客層の切り崩しが課題
  • 意外と人気な伊豆半島

投稿するネタがないときは、こんな感じで他の地域についても分析していこうと思います。

いま必要な観光消費のデータとは

さいきん投稿サボりすぎなので、短いですが少しだけ思いついたことを。

観光に関するデータは捉えにくいとはいいつつも、ここ最近で統計データが随分整備されました。国が公表しているものをざっと挙げただけでも、これくらいはあります。

1.出入国管理統計
2.宿泊旅行統計
3.旅行観光消費動向調査
4.訪日外国人消費動向調査
5.観光地域経済調査
6.航空旅客動態調査
7.都道府県間流動表
8.RESAS

さらに、WiFiが普及してきたこともあって、旅行者の位置情報を捉えられるようになってきました。

次の課題は、お金の流れを正確に捉えることだと言われています。上で挙げた調査でも消費額は把握されてますが、出国前に思い出しながら答えてもらう方式なので、正直言って正確とは言えません。

いずれ、ICカードやクレジットカードの履歴から把握していくような仕組みが整備される日が来るのが待ち遠しいです。ただ、そうした履歴データが普及してもなお、踏み込むことが難しい領域があります。

購入機会損失の把握

それは、「買いたいと思ったけど何らかの理由で諦めた」というシチュエーションの発生です。まぁ、これは観光に限ったことではないんですが、たとえ全ての消費者に電子通貨が普及したとしても、購入してくれないことには記録は残らないので、機会損失が発生してしまっていることを見過ごしてしまうのです。お金の流れの次は、気持ちの流れ、です。

購入履歴データは、そう遠くない未来に把握できるようになると思いますが、機会損失データを整備することはまだ誰も手を付けられていないんじゃないかと思います。そして、その機会損失を回避することこそが、マーケティング上最も重要な観点なのです。

全員の脳にチップを埋め込んで潜在意識を吸い出すなんてこともできなさそうなので、意外と紙アンケートやモニターツアーなどの古典的な手法で、「なんで買うの諦めたんですか?」って聞いてみるのが良いのかもしれません。もしくは、通販サイトの閲覧履歴をきっちり分析することが近道にはなるかもしれません。

そう思うと、まずは個別店舗に海外向け通販システムを導入してもらって(DMOがそういうシステムを用意して)、気になる商品はその場でブックマークできるようなインフラを整えればいいのかなー、なんて思ったり。