相手が自分の思い通りに動くことと動かないことの間隙にこそ、惚れるということの味がある。
僕が好きな小説家は「森 博嗣(代表作:全てがFになる THE PERFECT INSIDER)」と、「森見 登美彦(代表作:夜は短し歩けよ乙女)」です。
その森見登美彦の代表作が、この度、劇場版アニメになることが決まったそうです。
すでに実写映画も製作されている本作ですが、満を持してのアニメ化となります。
同じ森見作品である「四畳半神話大系」の地上波アニメ製作スタッフが再集結するということで、とても期待できます。
(田中美保が黒髪の乙女役という違和感よ)
京都を舞台にした作品
森見登美彦の特徴は、自身の京都大学での学生経験を活かした、哀愁漂う京都の街の情景と、世に名高い(?)腐った京大生の描写です。森見作品に出てくるシーンは、必ずしも観光地ではありません。
秋月橋、原ちゃんラーメン、内藤商店など、そもそも京都にあるのかすらよくわからないようなスポットが出てきます。
秋月橋@疎水
原ちゃんラーメン@出町柳
内藤商店@三条大橋
まぁ、京都を舞台にした作品は、森見登美彦にかぎったことではありません。
最近でいえば、川端康成の「古都」が続編映画化されたり、
アニメ「響けユーフォニアム」が人気だったり
と、枚挙に暇がありませんね。
コンテンツツーリズムの真髄
こういった作品を見て、実際のロケ現場を訪れるような旅行を「聖地巡礼」と呼ぶようになって久しくなりました。もともとは、大河ドラマがこうした旅行需要を生み出してきたと言われており、全国にあるフィルムコミッションという組織が、ロケ現場としてわが町を使ってもらおうとのしのぎを削っています。
これをただの現象ではなく一連の産業として「コンテンツツーリズム」と呼んだりもします。実は、学会もあります。雑誌もあります。
コンテンツツーリズム学会
http://contentstourism.com/
ロケーションジャパン
http://locationjapan.net/
とはいえ、僕はコンテンツツーリズムの理論には詳しくないのですが、なんでもかんでも作品の舞台になればいいかっていうと、そうではないように思います。本当にその街の魅力を引き出すような作品に巡り合わなければ、いたずらにブランドを消費するだけになりかねません。
そういう意味では、今回の「夜は短し歩けよ乙女」は期待できます。
京都という街の魅力は、ハイコンテキストな文化(相手に行間を読ませる)にあり、訪れる者にとってこれを十分に味わうことの難易度は相当に高いものです。本作品では主人公の京大生が「黒髪の乙女」の気を引くためにナカメ作戦(ナるべくカのじょのメにとまる作戦)を繰り広げますが、これがまさに京都を攻略しようとする観光客と重ね合わせて捉えることができます。
つまり、彼の不気味な執着心に共感を覚えるような人こそ、京都のハイコンテキストな文化に入り込んでいけるのではないか、と思うのですがいかがでしょうか。