持続可能な観光地経営のためのメディア戦略(1)

先日,ちょっとしたセミナーで登壇する機会をいただいたので,その時話した内容をまとめておきたいと思います。

もともとは「京都におけるWEBマーケティングの手法」について話して,というお題をもらったのですが,京都に戻ってきてから1年半で,自慢できるような手法の確立はおろか着手すらままならない,というのが実態です。なので,これまで分析してきた京都観光市場の特性や,DMOという組織が抱える課題を踏まえた来年度の方針について話すことにしました。話の流れは以下の通り。

大きく3段構成になっていて,導入ではこのプレゼンの位置付けの確認,中盤はマーケティングの基本的な考え方に沿って京都における構想を発表し,最後にあまり語られることのないB2B(観光客ではなく地域の事業者に対するマーケティング)について触れています。

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プレゼンも差別化が命

では,導入部分からお伝えしていきます。僕が専門にしているマーケティングブランディングにおいて最も重要だと思っているのは「差別化」なのですが,今回のようなセミナーでプレゼンするときにも意識しています。自分以外にも登壇される方がいる場合には尚更です。

今回は,観光専門WEBメディアの方と,WEBサイトログ販売事業者の方が来られていたので,WEBメディアの一般理論を語っても太刀打ちできません。そこで,京都という都市の特性や,DMOという行政寄りの現場が抱える課題から考えたことを伝えるように心がけました。

まず,京都という都市の特性ですが,これはオーバーツーリズムの一言に尽きます。この手のセミナーに参加される方は,喉から手が出るほど観光客が欲しいというほど集客に困っている地域の方が多いはずなので,京都のように観光客が増えすぎて困っているような街の話は他人事として捉えられてしまうかもしれません。そこでここは逆説的に,観光客が多すぎるからこそ「本当に来て欲しい人を呼ぶためにするべきこと」というDestination Marketingの本質が意識されるようになり,どんな地域においてもその地域にとって良いお客さんが根付かせていくためのヒントになるはず,ということを理解してもらいます。

つぎに,DMOのポジショニングについて確認をします。これも,地域が置かれている状況やプレーヤーとの関係によって認識が異なることが多いので,下図のようにセグメントを設定して可視化します。京都の場合は観光客を自力で呼べるプレーヤーが多いものの,ICTリテラシーのバラつきが大きいので,これを底上げしていくことが課題となっています。これを解決するためには行政やコンサル・大学の役割が期待されますが,「帯に短し襷に長し」ということで,それなりのリテラシーとプレーヤーとのネットワークを持って情報収集・情報発信ができるDMOに存在意義があるのです。

 

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あと,自己紹介ついでに自分のキャリアについても触れておきます。というのも,人口の少ない地域のDMOほど「WEBやマーケティングができる人材が見つからなくて困っている」という声が強く,自分のようなマーケターをどうやって見つければいいのかに対して答えを用意しておく必要があるからです。とはいえ,僕がUターンして今の仕事に就けたときのような奇跡を待ってもらっても仕方がありません。なので,マーケターは探し出すよりも育てるほうが良い説を唱えるようにしています。

実際,今回マーケティングの専門家としてWEBの話をしている僕自身,数年前までは自慢できるほどの専門領域を持たないシンクタンカーであり,WEBも担当者が不在だったから成り行きと独学で身につけることができただけです。なので,凄い専門家を呼び寄せることに頭を悩ませるよりも,身近な人の中で少しでもやる気のある(できれば若い)人にマーケティングを任せてみるところからやってみればいいんじゃないかと思います。受入体制が十分でないのに凄腕のマーケターを呼んできても,お互いが不幸になるだけですし。組織の身の丈にあったマーケターを育てたほうが無駄がありません。

こういうマインドセットを持ってもらうことで,この後に続くプレゼンも「もしかしたら自分にもできることかもしれない」という姿勢で聞いてもらえるようにしたい,という狙いもあるとかないとか。

本題は次回で

以上が導入部分でした。持ち時間30分なのに,ここまでで10分くらい使ってしまって,いつまで立っても時間配分が下手くそなのを反省。肝心のメディア戦略については,次記事に回しますので,お楽しみに。