2016年は京都観光のターニングポイント

本日、平成28年の京都観光総合調査の結果が発表されました。

http://www.kyoto-np.co.jp/sightseeing/article/20170621000186

入込客が減っても宿泊客は増えていて、消費額も増えたということで、
「量」から「質」へが体現されたということになります。

これは良いことなんですが、結果としての数値には実はあんまり関心がなくて(施策の効果を評価する指標としては遠すぎるから)、人の気持ちがどうなっているのかを分析して、マインドシェアを拡大することを考えるのが、マーケティングの仕事だと思っています。

以前の記事でも書いたとおり、行政がいまだに設定している「満足度の平均値」は指標として意味を成していないので、「他者への推薦意向」を、分布を考慮してスコア化したNPS(ネットプロモータースコア)を導入する必要があります。

最新の結果を追加してグラフ化すると、以下のようになりました。

日本人のNPSは、2012年の急落(震災の影響?)から、回復を続けています。混雑してるだとか、宿が取れないなんて話はよく聞きますが、その分宿泊料金などが上がったことで本当に京都のことが好きな人しか来なくなってきてるのだと想像します。(京都観光を諦めた人たちを対象とした調査を行ってみないと断定はできません)

一方で、外国人のNPSは、昨年度からわずかに下げ、ピークアウトの兆候が見られました。実際、Travel + Leisure誌の旅行先ランキングで2年連続1位だったところから6位へ陥落したこととも対応する結果となっています。今年のランキングももうすぐ発表される頃ですが、NPSが正しいとすると、ネガティブな結果となる予感がしています。

「市民自覚」というのは、京都市が実施している市民生活実感調査における「京都は観光客にとって質の高い観光都市である」という設問に対する回答結果をNPS化したものです。いわゆるシビックプライド(市民の誇り)は、市民参加による一体的な観光振興を実現するうえで非常に重要な要素なので、モニタリングする必要があると思います。で、結果を見てみると、微増傾向となっています。混雑には不満を持つ人はいても、京都が観光都市であることに対しては、ポジティブに捉えられるようになってきているのは、今後に向けた良い材料だと考えられます。

最後に、市民にとって暮らしやすい観光都市であるかどうかについての回答を指標化した「市民生活影響」ですが、これは2015年から2016年にかけて改善しています。もしかすると"慣れ"もあるかもしれませんが、歩道の拡幅や公共交通の改善・手荷物預かり・民泊対策などの取組が功を奏している結果とも考えられます。

 

外国人のロイヤリティが頭打ちとなり、市民感情も融和の傾向が見られたということで、2016年はなにげに京都観光にとってのターニングポイントであることが見えてきました。もちろん、今後オリンピックに向けた加熱を前にした踊り場状態である可能性は否定できませんが、一時のように上だけを見ていれば良いという感じでは無くなってきたことは間違いないでしょう。

需要が減ったときの対策をいかに先回りして考えられるかで、観光先進都市の真骨頂が試されることになりそうです。