外国人客を増やすことの是非(1)

論点の整理

僕の故郷であり、いまの仕事のフィールドでもある京都市は、年間の入込客数が5000万人を越える一大観光都市です。近年は観光客による混雑やマナーが批判されるなど、観光行政・産業の課題先進都市ともいえます。この京都という街において「外国人客を増やすべきか」という問題にどのような答えを出すかは、日本という国の将来を占う意思決定になるかもしれません。

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よくこの手の議論では、「国内にも支持される観光地を維持しつつ、外国人も呼ぶ」が模範解答として連呼されてますが、それは何の答えにもなってない、というか当たり前すぎるし、政策的意図が希薄すぎて、結局どっちつかずになって迷走する未来が見えてしまいます。
ここで大事なのは、外国人比率の水準と、外国人需要が変動するリスクをどう評価するか、です。

外国人比率は、どれくらいが妥当なのか?

基本的な考え方は、定住人口が減って生産力が落ちた分を外国人客の消費で支えることに尽きます。ここでは、京都市を例に考えてみましょう。訪日外国人6000万人を目指す2030年までに、京都市の人口は約11万人減少する見込みです。人口統計の予測精度は極めて高いので、移民受入でもしない限り、これは所与の条件として考えましょう。

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この減少分を埋め合わせるために、京都市民と入洛外国人の消費額を比較してみます。京都市民については、京都府の統計調査から推計すると約122万円になります。これは、年代構成とか分布をまったく考慮していない平均値ですが、簡単のためこの金額を採用します。

いっぽうで、外国人は京都市の統計によると約12.3万円となっています。ただし、これは全く消費をしなかった旅行者を除いた平均値なので、過大推計になっていることに注意が必要です。統計書をよく読むと、買物を行わなかった人の比率が約25%となっています。費目「その他(拝観料など」についてもこれを援用して、割り引いてやると、一人当たりの消費単価は10.5万円となります(詳しい計算は割愛)。

 

なぜ外国人客で賄うのか

もちろん、日本人旅行者が来ることによっても、定住人口の減少分を賄うことはできます。しかしながら、日本人の総人口は減少、日本人の旅行市場も縮小は必至です。京都市だけが日本人の需要を確保することに必死になっても、限られたパイの略奪と批判されるだけです。日本の観光を牽引する都市である以上、外国人観光客の増加で賄うことを前提に考えておくのが、いわゆる安全側の推計というものでしょう。