観光客の地方分散は進んでいるのか?

縁あって,来週とある学会で発表する機会をいただくことができました.
それで,いろいろと分析を進める中で,ふと疑問に思ったことが.

旅行先の格差って広がってるの?縮まってるの?

実感としては,訪日客全体が増えている割には,京都への観光客は伸び悩み始めているし,香川とか飛騨高山とか観光客急増しているって話も聞くので,格差は狭まってるのかなぁという印象です.

格差の広がりを評価する手法に,ジニ係数というものがあります.もともとは貧富の格差を定量的に評価するために開発されたものです.概要は下図のとおりで,ジニ係数が大きいほど格差が大きいということになります.

「ジニ係数」の画像検索結果

 

この考え方を利用して,観光庁の宿泊旅行統計をもとに,都道府県別の延宿泊客数でジニ係数をざっくり計算してみた結果が以下のとおり.予想に反してジニ係数は増加傾向,すなわち格差は広がっているという結果となりました.

 

  • 伸び悩んでいるといっても,それはごく一部の地域であり,都道府県単位で比較すると,まだまだ人気観光地を抱える都道府県の成長のほうが他を上回っている
  • 都市別で計算すれば,また違った結果になるかもしれない

 

もともとは,格差が狭まりつつあり競争が激しくなるという文脈にしようかと思っていたんですが,格差が広がっても人気観光地同士での競争が先鋭化するだけな気もするし,観光地の競争モデルってかなり複雑なのでなんとも言えないのかぁ,とモヤモヤ.

また,海外都市との競合の議論もあります.航空ネットワークの発達や市場の拡大,ICT技術の普及などによって,これまでマイナーだった観光地にも人が流れるようになった一方で,新興国のビギナー旅行者はこぞって定番観光地に押し寄せているので,評価が難しいように思います.

ビギナーもリピーターもごちゃまぜにして評価しても結論は出ないので,同じ人の旅行先の選択がどういう風に変わっていくのかであったり,京都という旅行先が比較される相手がどう変わってきているのか,という切り口で調べたほうが良いのかもしれませんね.

ということで,特に結論はなく,問題提起するだけの記事で恐縮です笑
どなたか,参考になる文献とかあれば教えていただけると嬉しいです.