デジタル広告とアナログ広告の違い

DMO界隈では,チラシやポスターなどのアナログ広告から,WEBを活用したデジタル広告へシフトしていきましょうという話がしきりに説かれています。僕もそうしたいと思っているのですが,実際に事業をしている職員のリテラシーが追いついておらず,いまだに組織としてのガバナンスも効いていないので,いつまで立っても紙に埋もれて仕事をする羽目になっています。

デジタル広告の良いところは,広告効果を測定しやすいということです。どれだけクリックされたか,どんな人がクリックしたかが数値で現れるので,その広告にどれくらい投資すればいいかを検討しやすくなります。とはいえ,クリックした人が実際どれくらい商品を買ってくれたかまでは測定するのが難しく,限界があると思っていました。

ところが,下記の記事を見て,広告を見た人が実店舗に来店したかどうかが,2015年から測れるようになっていたことを知り,驚きました。(キャリアのなかで,本格的なWEBマーケの実践機会をまだ得られていないのが,本当に悔しい)

GPSのトラッキングを許可しているGoogleユーザーに限られるんでしょうけど,広告をクリックしたあと,そのスマホを持ったまま実際に店舗を訪れたら,コンバージョンしたってことになるんだと思われます。

記事中では,コンビニの来店コンバージョンは200円前後ということみたいなので,普通は1回あたり200円以上買物するはずであると考えると,広告価値があると判断できるわけですね。

来年度は,なんとかしてWEB広告の導入を進めたいという気持ちが,一層強まりました。予算編成,頑張ろう。

でも,アナログ広告にもメリットはある

アナログ広告を全否定するつもりは無いので一応擁護。

  • アナログ広告のほうが安いので,うまくターゲットにハマっていればコスパは良い。(ただし,効果測定できないので,適切な場所に適切な量の広告を打つのが難しい)
  • 強制的に目に入ってくるが,WEB広告ほど嫌悪感が無い。
  • 友達と一緒に歩いているときに見かけると,会話のきっかけになったりする。
    (WEB広告の場合は,ひとりで見ることが多いので,会話に繋がりにくい)

ということを踏まえて,バランスを見極めて予算を振り分けるのが良いのではないかと思います。

京都観光の人気検索キーワードと,検索されるWEBサイトについて調べてみた

マーケティングとプロモーションを連動させたWEBサイトを作るためには,閲覧者の好みに対応できるように,十分なコンテンツを用意しておく必要があります。コンテンツの数が少なく,ジャンルの多様性が少ないままだと,どうしてもジャストフィットしないケースが増えてしまうからです。

とはいえ,記事や動画などのコンテンツを作るのも安くはありません。なるべく少ない数で勝負せざるをえないのであれば,その記事を読みたいと思ってサイトを訪れる人を増やす(意図せず読まされるケースを減らす)のが,セオリーでしょう。つまり,基本中の基本であるSEO対策(検索されたときに上位に表示されるようにすること)をやりましょう,ということです。

2017年の京都旅行に関する月別検索ボリューム

さっそく,Google Trendsで調べてみました。旅行ジャンルにおいて,「京都」というワードに組み合わせて検索されたキーワードについての検索量のランキングです。データの精度が粗いので,正確な数値ではありませんが,傾向をつかむだけという気持ちで見てください。

「観光」「ホテル」「バス」「新幹線」「天気」が,1年を通してパワーワードとなっているようです。11月前後は,やはり「紅葉」に関する検索が非常に多くなっています。「ランチ」や「お土産」が,その次に有力なキーワードとなっているようです。

あとは,東京や大阪といった都市名との組み合わせや,個別の観光地名が目立ちますね。「大阪 から 京都」とか「東京 から 京都」みたいなキーワードの入れ方している人が結構多いのは意外でした。

概ね「どこを観るか」「どうやって移動するか」「なにを食べるか」「なにを買うか」「どこに泊まるか」に答えられれば良いのかな,という印象です。

これだけだと「調べてみた」というタイトルの割には中身がないので,主なキーワードごとに,HITするWEBサイトについて確認してみたいと思います。なお各サイトのPV数は,VALUES社のeMark+という無料サービスを使って推定しました。

 

「京都 観光」で検索したときの上位サイト

さきほど挙げた5つの要素で調べればよいということですら,まだ頭の中で整理されていない状態の人が利用するキーワードであり,このキーワードで検索したあとに閲覧するサイトのレイアウトが与える影響はかなり大きいと考えられます。

1位:オフィシャルサイト 京都観光Navi(年間約2,800万PV)

ドメインが自治体の独自ドメインということもあって,TOPにヒットしています。このサイトを最初に踏む人が多いはずなので,やはりこのサイトをしっかりと作り込むことで,旅行者の頭の中にきちんとレールを敷いてあげられるかどうかが大事です。

2位:ぐるたび 京都府の観光・旅行ガイド(年間約2,161万PV)

ぐるなびが運営しているサイトです。京都市ではなく京都府という単位ですが,シンプルにまとまっていて,記事コンテンツも更新されています。体験サービスの予約にも対応しています。PV数は京都府以外も含めた値なので,京都観光Naviに比べると小規模だと思われます。Google検索エンジンが評価している割にPVが少ないのは,ニュースアプリと連携していなかったり,写真の使い方が控えめなレイアウトになっているせいじゃないかと思います。

2018年 京都で絶対外せない!おすすめ観光スポット&ランキング│観光・旅行ガイド - ぐるたび

3位:じゃらん 京都の観光スポットランキング(年間約33億9,200万PV)

ご存知,国内最大の旅行サイト(PV数はもちろん,京都以外のページも含まれてしまっているので参考値です)。

主観的なランキング記事が多いなかで,こちらのサイトは機械的なスコアリングでランキングが表示されています。ランキング機能としては最強だと思います。最近は記事コンテンツのほうが流行っているので,各スポットのランキングよりも,モデルルートのランキングとかあったらもっと面白いのにな,と思ったり。

余談ですが,ユーザー登録して,このサイトで旅行計画とかしたり使いこなせばもっと面白いんやろうけど,じゃらんを使うと何となく囲い込まれてしまって,最近流行りのホステルとかが選択肢から外れてしまうんじゃないかという気がしてしまいます。肝心の口コミ機能も,じゃらんで予約した宿にまつわる旅行じゃないとうまく利用できないっぽいのがもったいない。

なにはともあれ,このサイトとうまく連携するか,もしくはこのサイトに足りない機能を,観光Naviに持たせることを考えていこうと思います。

「京都 ホテル」で検索したときの上位サイト

まず,「じゃらん」「booking.com」「楽天トラベル」「agoda」「Expedia」が広告を打っていて,上位に表示されます。検索するたびに,表示される順位は変わるようです。

その下に,Google自身が,地図上に宿泊価格を表示して検索できる画面を掲載しています。とくに,普段利用するサイトを決めていない人は,Googleでそのまま検索する人が多いでしょうか。

最近,メタサーチサイトの「TRIVAGO」がTVCMを流しまくっていますが,Googleも料金比較できるようになってるってこと,どれくらい知られてるんでしょうか。一応,Googleでは「じゃらん」の料金が対象になっていないようなので,TRIVAGOのほうがカバー率が高いという点で優位性はありそうです。絞込条件などのユーザーインターフェイスも,TRIVAGOのほうに軍配が上がります。ただし,TRIVAGOはGoogle MAPs利用しているので,多かれ少なかれGoogleにも利益が発生します(やっぱりGoogleは凄い)。

ホテル検索サービス市場の競争は熾烈を極めているようなので,オフィシャルサイトにおける宿泊施設情報の発信は,よくよく考えないといけなさそうです。たとえば,ホテル検索サイトには出てこない,宿泊以外の要素との組み合わせであったり,従業員の顔が見えるカタチでの記事コンテンツだったり。

「京都 バス」で検索したときの上位サイト

1位:京都バス株式会社(年間約346万PV)

意外と,バス会社のホームページがTOPに。しかも,市バスではなくて京都バス。2位も,京都バスの時刻表。

京都バス株式会社

3位:歩くまち京都 バス・鉄道の達人(年間約786万PV)

京都市内に特化したオフィシャル路線検索サービス。渋滞状況を加味した検索ができたり,そこそこいい機能を持っているのに,市民にすらいまいち認知されていません。

なんせ,ユーザビリティの悪さもさることながら,ネーミングセンスが絶望的にひどい。もう少し,路線検索サービスであることが分かるような名前にしたり,短く愛称っぽい感じにしたほうが良いんじゃないかと思います。

画面の大部分を占めるスライド写真が,何の役割も果たしていないのももったいない。せめて路線図でも載せておけばよいのに。と,いろいろ不満が浮かんできても,所管が異なるので口出ししにくいという縦割り行政の弊害に阻まれます。

でも機能はよいので,このサイトをうまく活用して旅行した場合の記事を作ったりしたら面白いかな,と考えています。

「京都 ランチ」で検索したときの上位サイト

まずは,Googleが現在地周辺のランチスポットを表示してくれます。

1位:風情溢れる町屋ランチ20選 | キナリノ

キュレーションサイト大手のキナリノがトップ。町屋にフォーカスしているのが高評価のポイントでしょうか。

2位:京都のランチ 昼の人気ランキング|食べログ

続いて,データベース系のサイト,食べログ。「京都 観光」のときと同じで,読み物系の次に,データベース系のサイトが表示されるようです。

[食べログ]京都のランチ 昼の人気ランキング

3位:京都・河原町でおすすめの安くて美味しいランチ12選 | icotto[イコット]

またまた,読み物系サイト。河原町エリアに絞っているのが,上位に表示される原因なのかも。

個人的には,4位に表示されるRettyが,レビューがしっかりしているので一番好きです。

「京都 土産」で検索したときの上位サイト

1位:絶対喜ばれる!京都人気お土産30選&地元民ランキング|じゃらん

じゃらんには珍しく,読み物系コンテンツがTOPに。スイーツ以外のお土産も出ているのが特徴。地元民に対するWEBアンケートがベースになっているのが面白い。

2位:京都駅で買える素敵な「京都のお土産」9選|キナリノ

つぎはキナリノ。帰る直前に京都駅で買えるお土産特集。さっきの町屋ランチといい,キナリノは少しフォーカス絞った記事にするところに特徴があるみたいです。あと,内容と関係ないけど,ページが複数に分かれてないので,次のページを読み込むストレスがなくていいですね。その分,ダウンロード回線が遅い人は,1ページ目を読み込むのに時間がかかるのかもしれませんが。

3位:リピート必須のスイーツ&お菓子14選|icotto

読み物系3連続。ここまで来ると,無難な感じです。

「絶対,京都でしか変えないお土産!」とか,「食べ物以外のお土産10選!」とかあれば面白いのにね。

まとめ

途中で面倒くさくなってきて,最後の方雑になってしまいましたが,まさにこういう無数にあるメディアの記事をメタ分析した記事をオフィシャルサイトに載せれば,民間サイトと機能重複せずに,観光客にとってのゲートウェイ的なWEBサイトにできるんじゃないかと思います。

本来そういう作業は,Google検索エンジンアルゴリズムが自動的にやってくれているんでしょうけど,ユーザーにとってはブラックボックスになってしまっていて,それが却って不信感を招いてしまうこともあると思います。

そこで,あえて各サイトに対する評価を記事にして集めることで,まずはそれを見てからお気に入りのサイトで調べよう,と思ってくれる人が増えれば,業界全体にとってプラスに働くんじゃないでしょうか。

観光地WEBサイトつくりについて

DMO立ち上げに携わって約1年半経ちました。去年はちょっとしたデータ分析の発表をすることができましたが,ほとんどは来年度事業の予算要求の仕込みとか,予算決算管理,現行のオウンドメディアの管理に費やすことになりました。

今年は,予算決算管理の事務作業を各自でできるようにさっさとマニュアル化してしまい,全容を把握できたメディア,とくにWEBサイトの刷新をしたいと思っています。WEBサイトというと,どちらかというとマーケティングよりもプロモーションの範疇だと思われがちですが,WEBサイトは観光客から情報を大量に収集できる場なので,最優先課題と言っても良いと思います。

改修のポイント

京都市には京都観光NaviというWEBサイトがあり,かなりの情報量を持っているんですが,設計されたのがかなり前なので正直言ってダサくて,結構もったいないことになっています。いまどきおしゃれな観光WEBサイトがたくさんあるなかで,このままでは誰も見てくれなくなってしまいます。

なおかつ,RETRIPみたいな観光系メディアと機能が重ならないように,うまく棲み分けることも考えなければなりません。また,京都は観光資源や情報量に恵まれているので,ビジュアルで魅せることよりも,情報を整理することが求められています。

したがって,今抱えている膨大な情報や民間サイトの情報を集約して,目的に応じて検索しやすくすることが重要です。なおかつ,個別のページがGoogleの検索にひっかかりやすくすることで,検索の手間を省くような仕掛けが必要になります。

つぎに重要なのが,毎日でも見に来たくなる仕掛けづくりです。これはすでに観光Naviで取り組んでいることではありますが,その日のイベントが毎日トップページに更新されるようになっています。ただ,この情報を更新するのがかなりの手間なので,自動的に情報が集まってくるような仕掛けができればなおよいです。

最後に,ユーザー側にはあまり意識してもらう必要の無いことですが,見る人の閲覧履歴や好みに合わせて表示させるコンテンツを入れ替える,ということです。これは,マーケティングオートメーションなどのツールを導入すれば実現することができます。統計データを分析して,その結果を見てプロモーションしていたのではもはや遅すぎるのです。

これらがうまく機能すれば,ユーザーは検索をする手間が省けることになり,見たい情報にアクセスできる確率が高まります。知りたいと思った瞬間に,すぐ情報を提供できるサイトになっているかどうかが重要です。そして,京都の観光といえば京都観光Naviから調べれば良いと認識されるようになるのが理想です。この辺の考え方については,Zero Moment of Truthで検索して調べてみてください。

具体的な改修イメージ

まず,検索しやすくするために,これまで作り込んできた観光スポットなどの膨大な情報をタグで管理できるようにしたいと思っています。具体的には以下のような感じ。

宿泊:ホテル,旅館,ゲストハウス
飲食:和食,洋食,中華,ラーメン,モーニング,ランチ,ディナー,カフェ,スイーツ,酒,納涼床
体験:ガイドツアー,伝統工芸,茶道・華道など,乗り物,銭湯
鑑賞:寺社・名所,祭事,美術館・博物館,自然・動物,劇場・能・狂言,特別公開,ライトアップ,石碑・駒札
エリア:洛中,洛北,洛東,洛西,洛南
季節:春,夏,秋,冬
シチュエーション:一人旅,デート,ファミリー,友達,ビジネス,夫婦

つぎに,毎日みたくなるサイト作りとして,当日イベント情報だけでなく,他の日のイベントを検索しやすくするカレンダー機能を作ります。そして,イベントを掲載したい事業者が掲載の申請をするためのフォームを作ることで,自動的に情報が集まってくるようにします。

最後に,ログイン機能を実装し,その人がよく見るジャンルや,WEBサイトの閲覧頻度などに応じて,予め設定したルールに基いて情報が表示されるようにしていきます。このあたりの仕組みは,ユーザーの反応を見ながら修正していく感じで。

以上の内容を踏まえて,モックアップを作ってみました。

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改修するための予算と,呼び込むための読み物コンテンツをどれくらいつくれるか次第ではありますが,今年はこのイメージを目標にしていきたいと思います。

【プログラミング不要】Repl-AIでチャットボット作ってみた

冬休みですね。時間かけてやらないとできなさそうなことをやろう,ということで,前からやってみたかったチャットボットの開発について調べてみました。
 
世の中便利なもので,プログラミング全くできなくてもボット開発できるように,親切な人たちがツールを公開してくれています。docomoのRepl-AIというやつでアカウント作って,チュートリアルとか見て作業すれば,1時間くらいで簡単なものが作れます。
 
こんな感じでフローを繋いでいくだけ。

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ボックスの種類は,ボット側と,ユーザー側の2種類しかないのでかなり単純。ユーザー側の発言内容の曖昧性もカバーできるようになってるし,想定される入力内容もたくさん登録できます。想定から漏れてしまった場合は,ワイルドカードを登録したボックスに流し込んで,「よくわかりませんでした,もう一度お願いします」とか返事するようにしておけば,会話フローが迷子になることもありません。
 
そう思うと,プログラミングの知識よりも,こういうフローの論理構成を考えられるスキルがこれからますます重要になってきそうです。チャットボットの応答フローの事例集って,本屋にもWEB上にも全然出回ってないっぽいし,セオリーはあるにしてもかなりクリエイティブな領域のスキルなので,ちゃんと集めたらバカ売れしそうな予感。
 
あと,Repl-AIの凄いところは,行き場のない会話の受け皿として,雑談ボットや最近のニュースに関するボットのパッケージが用意されているというところ(下図の緑のボックス)。ここの作り込みをやらなくて済むのは,非常にありがたいです。
 

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ということで,さっそく下記Facebookページに連動させてみました。Messengerで話しかけると,返答があると思います。API制限で,無料の範囲では月間1000回までしか応答できないみたいなので,気をつけてくださいね。
 

観光のライバル

久しぶりの更新となってしまいました,すみません。
先日,某所で講演したときに取り上げた話題について書いてみようと思います。

ポジショニングについて考えよう

マーケティングの基本は,セグメンテーション,ターゲティング,ポジショニングと言われており,これまで色々なデータをもとにセグメンテーションとターゲティングはざっくり行ってきました(まだまだ粗いので,随時見直して行こうとは思っています)。

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そこで,そろそろポジションニングについても考えていかないといけないな,と思っています。設定したターゲットに対して,京都観光を訴求していくうえでのライバルを特定し,どのように差別化していくかということは,非常に重要な問題です。

諸外国とのポジショニング

以下の図は,訪日主要8カ国の今後旅行したい国についての回答結果の関係性を,視覚的にわかりやすいようにコレスポンデンス分析で配置したものです。距離が近いほど,関係性が強いことを意味しています。

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出所)DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行社の意向調査(平成29年版)をもとに作成

たとえば,着地先としての日本は,豪州や中国と近い位置にあることから,海外の旅行者にとってこの3カ国は同程度の位置付けとなっていると考えられます。

したがって,訪日観光は,豪州や中国と差別化することが重要ということになります(調査対象に東南アジアの観光地が含まれていないことには注意)。豪州とは文化面で大きな違いがあるので良いとして,日本と中国の違いははっきりと打ち出していかなければなりません

ちなみに,着地先としての日本は,発地としての中国,台湾,香港と距離が近くなっているので,やはり中華圏の訪問意向が強いということも分かります。

国内他都市とのポジショニング

中華圏や韓国などの近隣市場からしてみると,日本国内の観光地同士も比較対象となるため,京都としては国内他都市との差別化も進めていかなければなりません。

下図によると,京都は東京に次ぐ,大阪,富士山,北海道あたりのグループに属しており,これらの都市や地名が海外の旅行者にとって同じくらいの位置付けとなっていることが分かります。マーケティング戦略では,チャレンジャー戦略といって上位との差別化を徹底的に行うことが有効といわれるポジションです。

ちなみに,さらに市場シェアを獲得する圧倒的な知名度を持つことになった場合は,リーダー戦略(チャレンジャーの真似をしまくることで新しい芽を摘みまくること)が有効と言われています。ただし,シェアの7割,少なくとも5割くらいは支配しないと有効に機能しない戦略なので,観光地の競合上位都市はみんなチャレンジャーだと考えるべきでしょう。

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出所)DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行社の意向調査(平成29年版)をもとに作成

本当のライバル

ただ,今回僕が主張したいのは,こんな風にデータにしなくても分かりきったようなことではありません。世界の観光地ランキングでも上位に名を連ね,日本国内の観光市場を牽引する「京都」という観光地を成長させていくためには,他の観光地とのパイの奪い合いではなく,もっと大きなスケールで考えましょうということです。

下図は,日本人の趣味行動率の推移ですが,旅行が年々減少していることが分かります。テーマパーク等,美術鑑賞など,旅行と似ている近距離の外出行動も減少傾向となっています。そしてこれに取って代わるように,映画やゲームといったバーチャルな世界への没入を伴った趣味の行動率が上昇しています。

出所)社会生活基本調査

 

明らかに,日本人の余暇の過ごし方がリアルからバーチャルへシフトしているのです。

この先,攻殻機動隊の世界のように身体にプラグを指して脳と直接データをやり取りできるような未来が,僕たちが生きている間には訪れる,と僕は思っています。

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パプリカの世界のように,他人の夢を映像化したり他人の夢に潜り込むことだってできるようになるかもしれません。だってすでに,他人が作ったゲームの世界にのめり込むということを人類は経験しているんですから。

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自由にフィールドを移動できるオープンワールド系のゲームが流行り始めていることや,VRやARなどの映像技術が普及してきたことも,旅行のバーチャル化現象の象徴です。

ディスプレイの中の世界に手軽に旅行できるようになったいま,非日常を楽しむという程度の理由では旅行の動機は成立しなくなり,旅行の本質の範囲を更に絞り込んで考えなければならない段階となっています。

なのに,観光行政の現場ではこの問題を見て見ぬふりをして,観光地の認知度をいかに上げるかというだけの問題に固執・単純化してしまい,減っていくパイを奪い合うことに終始してしまっています。どんなに強力なプロモーション施策に成功したとしても,他地域への旅行需要を奪っただけでは,長期的には観光産業のためになるとは言えません。旅行・観光市場を牽引するような立場にある主体が,この問題に真正面から取り組まないで,一体誰が取り組むというのでしょうか。

本当にライバル?

「じゃあ,人間は最終的にみんなバーチャルの世界に閉じこもってしまって,リアルの世界の観光は無くなるの?」という疑問が,当然湧いてきますが,僕はそうとは限らないと思っています。

なぜなら,京都という街を観光地たらしめている神社仏閣の建築景観は,過去の人々が抱いてきた夢や理想を具現化したものであり,これを教義や絵画,彫刻などの媒体を通して遠くにいる人々に伝えることで,彼らに「京都に行ってみたい」という気持ちにさせてきたことと,いまリアルとバーチャルの間で起こっていることは,問題の構造としては同じだからです。

もし,いま起こっている問題が人類にとって初めての現象なのだとしたら,人類はとっくの昔に旅行するという行為を止めてしまっていたはずです。でも実際そうはなっていないのだから,バーチャルへのシフトが起こっても旅行という行為が無くなるわけではないはずなのです。

夢や理想の具現化はバーチャルで無ければならなくなるわけではないし(リアルよりもバーチャルのほうがコストは安くなるとは思いますが),リアルで体験することとバーチャルで体験することのギャップが無くなるということもないでしょう。あえてコストをかけて移動することに意味づけをする旅行者もいるでしょうし,デジタルの世界から隔離された秘密の空間を残すような動きも出てくるかもしれません。

大事なのは,ゲーム等のバーチャル旅行体験を外部経済(ライバル)とみなさず,同じ産業として取り込んでしまい,バーチャル観光でも収益を生み出していくことを受け入れて,体験価値をデザインできるかどうかということです。その土地や文化に対してお金を落とすタイミングがリアルであるかバーチャルであるかどうかは,大した問題ではないのです。

バーチャルの段階からお金を落としてもらう仕掛として,映画やアニメのロケ地観光はその走りだったりするわけですが,京都を舞台にしたゲームを作って売ったり,僧侶の集合知人工知能に学習させてWEB上でありがたい説法を聞くことができる有料サービスを展開することも,その土地のアイデンティティを感じる機会を提供するという意味で,観光の守備範囲として考えればいいんです。

余談

なので,観光地案内のチャットボット開発や,ホームページのUXデザイン改修を,公費を投入してでも強力に推進することが,地域の競争力を維持していくためには不可欠だと思っているんですが,なかなか糸口が見つかりません。

そんなことは民間でやればいいって言うけど,技術力や志のある民間企業を振り向かせるためには,行政としてそれなりのポーズを取らないといけないと思うんですけどね。ということで,最後まで読んでいただいたみなさん,こういうことに関心のありそうな方がいたらぜひご紹介ください。

ファシリテーション・グラフィックが面白い件

先日,地域課題解決のためのワークショップに参加しました.目的は,

  • ワークショップの手法を学ぶこと
  • 人脈形成
  • アイディアをなるべく形にしてみたい

といったところです.

今日は,学んだことを備忘のために書いておこうと思います.

マンダラート

地域課題のブレインストーミングの手法としては,KJ法が有名だと思いますが,今回はマンダラートというのをやりました.紙を3✕3の9分割にして,中央にキーワードを書き,周囲に連想ワードを3分以内に書く.連想ワードのなかから重要だと思うものを選び,また同じように連想する.マインドマップと考え方は同じですね.

マシュマロ・チャレンジ

チームメンバーの前に並べられたのは,ハサミ,タコ糸,パスタ,テープ(画面外),そしてマシュマロ.これらを使って,15分くらいのあいだになるべくマシュマロを高い位置に固定する,というゲーム.

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結構うまく組み立てられてると思ってたのに,最後マシュマロの重みに耐えきれず崩壊(あいにく,写真は無い).ポイントは,早めにマシュマロの重みを確認して,最終形に必要な強度や構造を考えるということ.

時間をかけて100%の成果を狙うのではなく,60%くらいの完成度のものを作ってから軌道修正していく,というプロトタイピングの考え方を体験するための手法が,このマシュマロ・チャレンジということです.

グラフィック・レコーディング

今回のワークショップでは,その内容がずっと模造紙にイラストで記録されていました.議論や発表の結果を可視化することで,齟齬を解消したり脱線を回避したり,第3者にわかりやすく結果を共有することができます.

 

議事録を素早く的確に作成する能力は,コンサル業界で身につけることができました.ある程度時間をかければ,デザイナーほどじゃないけどグラフィカルに仕上げるのも得意なので,こうした技術にはとても関心があります.

前職は打合せスペースにホワイトボードがあったので,図式化しながら意見出しして,最後に写真で撮っておくことが多かったのに,今はそういう環境無いのが残念,というか問題かも...自分でボード買って持っていこうかな・・・

 

ファシリテーション・グラフィック

グラフィック・レコーディングのさらなる進化系として,議論の司会をしながら画を描いていくのが,ファシリテーション・グラフィックです.シンポジウムとかでパネルディスカッションするときに,議論の内容を描いてスクリーンに映してくれれば良いのにと何度も思ったことがあるので,今後これが専門職として認知されるようになればいいのにな,と思います.

www.slideshare.net

 

ちなみに,今回自分で描いたなんちゃって絵コンテがこちら.議論を可視化したわけではないので,グラフィック・レコーディングやファシリテーション・グラフィックとまではいかないけど,イメージの共有には絶大な効果を発揮すると実感.

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まとめ

アイディアをアプリケーションソフトにすることを体験しにワークショップに参加したけど,それ以前にアイディアを図に落として合意形成する手法が面白かった.データ分析はほどほどにしてこういうスキルトレーニングをしたほうが,重宝される人材になれそう.

CT Planalyzerが凄い件(ツーリズムEXPO2017の感想③)

Google MapsとかNAVITIMEとか,ルート検索には事欠かない世の中になって久しくなりました.でも,旅行するときのルートは,短くて早ければいいわけではないというのが難しいところ.

ガイドブックを見て自分で計画を立てたり,あえて何も決めず迷ってみたりすることも,旅行の醍醐味だったりするので,これを考慮したルート案内機能の開発は,かなり奥が深いです.

そんな大きな課題に,以前から首都大と東大の先生がチャレンジしていて,数年前のツーリズムEXPOから「CT Planner」というアプリケーションを発表されていました.利用できるエリアは有名な観光地に限られますが,目的や気分に合わせてルートを提案してくれる優れものです.

このシステムの特徴は,実際の検索結果や移動データをもとにルートを推薦しているわけではなく,各観光スポットに「自然」「アート」といったパラメータを与えておき,検索条件に適した組み合わせを計算して導き出しているという点です.つまり,GPSとかでデータを集めなくても,頑張って観光地に関するデータを入力していけば,どの地域でも作れるはず,ということです.

一般の旅行者にとってはややマニアックな感じもするので,どちらかというと旅行企画担当者や,旅行雑誌編集者なんかに利用してもらうことを想定しているようです.ぜひ,みなさんも遊んでみてください.

 

CT Plannerの裏情報

そして今回のツーリズムEXPOでは,これの詳細版である「CT Planalyzer」が発表されていました.CT Planalyzerでは,推奨ルート以外のルートも表示され,観光スポットごとの関係性の強さなども確認することができます.まさに,CT Plannerの結果を分析するためのツールです.

データをダウンロードして分析するのは研究者くらいでしょうけど,ルートのおすすめ度合いによって色の濃さが変わって表示されるのが分かりやすくて,インターフェースとしては優秀だな,と思います.

 

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こういう見せ方をすることで「そこまで有名じゃないけど,ちょっと逸れればこういう観光スポットもあるのか」ということに気づくことができます.混雑を避けて,自分だけの観光ルートを作りたいという方には,ぜひ使いこなしてみて欲しいです.