京都市内の人気撮影スポットをヒートマップにしてみた

先日Facebookのほうで,どこが混雑しているかがAgoop社の「混雑マップ」で見られるようになったことをシェアしました.混んでいる時間帯を避けるためにうまく活用できれば面白いです.

観光地選びをより最適化するためには,混雑だけでなく,その観光地がどれくらい見ごたえがあるかも同時に把握できればいいのになぁと思って色々調べていたら,北大でこういう研究がされているということについても投稿しました.

前々から,SNSで投稿されたデータの位置情報を調べて,どこが人気スポットなのか分析してみたいなぁと思ってところだったので,こういう研究は非常に興味深いです.

そんなこと思っていたら,大学の研究室の先輩が「だったら,これ使ってみれば?」と,超絶便利なツールを紹介してくれました!その名も,Flickrから大量の画像のデータを持ってくるツールです.

 場所と期間を指定したら,写真共有SNSで有名なFlickrInstagramスマホ特化やけど,Flickrはカメラユーザーが多い)から,データを根こそぎ吸い上げるというもの.対象となるデータが膨大なので,ダウンロードするのに結構時間はかかるけど,これは画期的なツールです.

データを集めて,QGIS(無料の地図編集ソフト)をインストールして,ヒートマップの作り方調べて,ざっくり作ってみた結果が以下の通り.上記のツールやQGISの使い方は,別記事でまとめたいと思います.

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データ対象期間は2017/4/1~2017/8/27.投稿数は11415サンプル.これを「いいね!」の数で重み付けして等間隔ヒートマップ化しました.赤いところほど,投稿数が多い,または人気の高い投稿が多いスポットということになります.

といった実態が,半日の作業で把握できるようになります.これをもとに,月別,投稿者の居住地別,スポット別などで集計分析することで,かなり面白いインサイトを得られるのではないかと思います.

もう,位置情報系のビッグデータを買う必要ないですね.

宿泊税の使いみち

これもNewsPicksからの転載です.最近話題の京都市における宿泊税について.

www.sankeibiz.jp

 

ざっと年間20億,肝心なのは何に使うか.

トイレ設置とか電線地中化とか目に見えるハード整備は分かりやすいけど,そういう結果が想定しやすくて予算要求しやすい事業は既存の財源を充てればいいんじゃないかと思います.ハード整備したところで,混雑が解消したり,市民生活が激的に改善するとも思えませんし,むしろその整備したエリアへ需要がより一層集中するだけな気がします.

なので,新しい財源は成果が出るかどうか想定がしづらく手を出せてこなかったソフト事業に充てて欲しいです.魅力を開発・発信して付加価値を高めたり,需要を平準化するための誘導を行ったりすることで,少ない客数でも地域を維持できるように工夫することが,一番重要な取組だと思います.

あと,100円固定なのはたしかに気になりますが,末端の簡易宿所まで売上把握するためにかかる徴税コストの問題とか,高級宿泊施設に対する配慮とか,色々理由があるんじゃないかと思います.100円程度に影響を受けるような価格弾力性の高い旅行者よりも,そんなの気にしない富裕層に来て欲しい,というふうに考えられなくもないです.(税制の逆進性をうまく利用している)

もっと税額を増やして需要を抑制すれば混雑が解消するという人が多いようですが,いたずらに課税しても競争原理を阻害するだけなので,僕はあまり賛成できません.あくまでも,事業者の判断によって客室単価や入場料などが上がることで需要が調整されるようにするべきで,そのための判断材料を提供したり,付加価値を上げるための支援に必要な分だけ徴税できれば十分です.

それがどの程度なのかという議論が先にあるべきで,税だけで市場をコントロールしようという発想は,観光地の魅力の源泉を枯らすことに繋がります.

時代に合わせて変わりうる仕組みは「伝統」ではない

下記の記事に対してNews Picksでコメント付けました.はてなブログとは連携していない(WEBサービスとしてやや競合している)ので,面倒ですがこちらにも再投稿します.

dot.asahi.com

(以下,コメント)

価値交換の基準をブラックボックスにして,お互いの信用をテコにすることで付加価値を生むハイコンテキストなビジネスモデルもあれば,全て明確に値付けをするローコンテキストなビジネスモデルもあるわけで.

ハイコンテキストモデルにロイヤリティを持つ人もいれば,ローコンテキストモデルにロイヤリティを持つ人もいて,必ずしもカニバるとは限らない。たしかに江戸時代以降積み上げられてきた前者のマーケットの縮小は,短期的には仏教を弱体化させる可能性はあるけど、その分新たなマーケットは形成されるはずで、人間の信仰心のポテンシャルが損なわれるとも限りません。

協調してブランドを形成してきた同業者からしてみると,市場を荒らされて不利益を被るという問題はあるかもしれないけれども,仏教の普遍的価値ってそんなもので揺らぐほど脆弱では無いんじゃないでしょうか.

信仰をなにか良くわからないありがたいものとしてブランド化することで,信徒の心と向き合うことをサボってきたビジネスモデルよりも,生きていく上でそれがなぜ必要なのかをきちんと説明するという宗教本来の目的を追求しているほうへ評価が集まることは、別に不思議なことではないと思います。

国籍別の国内宿泊先月次ランキング(ホテル統計を強化しました)

京都市観光協会では,毎月ホテル統計を発表しているのをご存知でしょうか?

この手の統計は,観光庁が公表している「宿泊旅行統計」が有名ですが,「宿泊旅行統計」は都道府県単位までの細かさでしか地域別の集計ができないという制約があります.京都市観光協会のホテル統計では,独自に市内のホテルに調査を依頼することで,市単位での宿泊客数の推計を行っています.自治体単位でこれをやってるのは,京都だけです多分.

2017年6月および上半期分の結果が先日リリースされたのですが,今回からちょっぴりバージョンアップしています.

広報発表「平成29年(2017年)6月及び上半期の外国人客宿泊状況調査について」
https://www.kyokanko.or.jp/kaiin/image/pdf/info170802.pdf

該当部分はP10,11で,経済産業省「観光予報プラットフォーム」のデータを用いて,国籍・地域別の旅行先の分布や,予約時期の分布を集計しています.手が回っていなくてまだPDFでしか出せていませんが,そのうちホームページ改修して使いやすいインターフェースで提供できるようにしたいと思っているので,ご期待ください.

「観光予報プラットフォーム」は,誰でも頑張れば集計できるオープンデータなので,こっそりGoogle Drive経由で埋め込んだデータを置いておきますね.上記の資料は6月分のデータしか掲載していませんが,こちらは上半期分のデータも含めています.

 

データを見る場合の注意点として,東京都特別区は23区別の集計となっているので,合算すれば1位になるはずのところ,下位にランキングされてしまっています.

また,宿泊客数の絶対規模は,国の宿泊旅行統計と必ずしも一致していません.推計に用いているデータや,拡大処理の考え方が異なるためだと思われますが,観光予報プラットフォームの推計方法はブラックボックスになっているので,とりあえずそのままの数値を掲載しています.宿泊先の順位の変動など,相対的な傾向を評価には使えます.

中国

  • 大阪,京都の2強.
  • 1~2月の春節シーズンの需要が強い.
  • 冬場は北海道も強い.
  • 那覇も以外と冬場のほうが多い.
  • 京都が相対的に存在感を増すのは3~4月.

台湾

  • 中国と比べると季節感格差が小さく,春節よりも桜シーズンのほうが多い.
  • 京都市台東区にすら負けており,東京への需要が強いことが分かる.浦安市も上位であることから,ディズニーランドの人気が高いことも影響していると考えられる.国内旅行に近い感覚で旅行されていると言っても良さそう.
  • 夏場になると沖縄の人気も高くなる.地理的に近いことも影響しているだろう.

香港

  • 中華圏であるが,欧米型の需要パターンに近い.
  • 京都市はベスト5にすら入らないこともあり,他の国に比べると人気がない.
  • 台湾同様,夏場は沖縄が人気.
  • 那覇はなぜか春に多くなる.トランジットで宿泊か?

韓国

  • 昨年低調だった韓国は,今年に入って持ち直してきているため(為替の影響?対中関係悪化による需要シフト?),季節変動の評価には注意が必要.
  • 地理的に,九州・沖縄の需要が強い.
  • おそらく,京都は秋頃に存在感が強くなる.
  • このデータは,韓国客に多い日帰り客が含まれていないので注意.

アメリカ

  • 4月前後(イースター✕桜)に需要が集中.
  • 伝統文化に対するニーズの強い米国市場は,京都へのロイヤリティが圧倒的.
  • 冬場は,訪日市場規模そのものを拡大する努力が必要だが,東京へのビジネス需要は安定してるように見えるので,京都にも寄ってもらえるような仕掛けは有効となる可能性がある.

英仏独西

  • アメリカと似ているが,北海道や浦安市がランク外となっており,廿日市(広島)が上位にいる点が特徴的.

オーストラリア

  • スキー需要があるので,欧米と比べると,冬場の需要の落ち込みが少ない.
  • 東京,大阪の需要が強いのも,特徴的.(都市的な観光を好む?あるいは,ジェットスターの深夜便のために,空港に近いところで宿泊している?)

こんなところですかね。めっちゃ活用してるので,経産省は頑張って予算継続して欲しいです。今後もデータ更新していきますので乞うご期待!

なんだかんだでコンサルタント

先月はデータ分析の仕事が多く,学会に出たり,講演の機会をいただいたり,少しだけ実績を残すことができてきました.また,同じような目線で意見交換したり,事業化の相談ができるパートナーとのお付き合いもカタチになってきました.今月は,いよいよ戦略を書き始めていこうとも思っています.

元来,営業にチカラを割くのはあんまり好きじゃないんですが,背に腹は変えられないし,研究(クリエイティブ)から調達(ロジスティクス),営業(セールス)まで全部ひとりでやるっていうところに価値を感じて,前職(シンクタンクコンサルタント)を選んだことが多少は役に立っているのかも,と思いながら過ごしています.

戦略を考えたり既存の組織を改革するとなると,色んな立場の人が色んな意見を持っていて,なかなか一筋縄ではいきません.素直に,観光データの分析提供したり,補助金引っ張ってきたり,伴走コンサルするような会社をイチから作ったほうが早いんじゃないかと思ったりもします.

でも,自分が思い描くビジネスモデルを実現するために他者をねじ伏せたり,支配するために画策するよりも,それぞれが考えているアイディアのうち自分に都合のいい部分を見つけて後押しすることで,思惑に近づくことができないかなぁとコンサル的な立ち回りをしてしまうのがラクだと感じてしまうのは,最初に選んだ仕事の影響なのかもしれません.

とはいえ,こういう現場のコンフリクトに首を突っ込んででも,地域社会に影響を与えるような仕事がしたいと思って転職をした手前,多少のストレスを抱えたりポリシーを曲げてでも,そろそろクリティカルな結果を残さないとなぁという感じはしています.どういうサービスを作っていかないといけないかは分かっているだけに,マンパワーが足りないのがボトルネックです.

そう思うと,一番コンサルを欲しているのは自分自身なのかもしれないですね笑 理論武装して自信のストックを限界まで高めたとしても,フローが無くなるわけではないので,ふとしたときに訪れる不安をケアしてくる心の拠り所が大事.まぁ,こんな愚痴めいた記事書いてる時間があったら他にやるべきことがあるだろ,と自分に言い聞かせつつ,明日からも頑張ろう.

民俗芸能を観光資源化してお金を儲けること

京都の町は祇園祭真っ只中です.鉾建てや曳き初めが続々と執り行われています.1,200年以上も昔に疫病を祓うために始まったこの神事も,現在は全国から延約100万人を集める一大イベントとして認識されています.

各山鉾町は手ぬぐいや粽(ちまき)などのグッズを販売し,観光協会が設置している有料観覧席の収益も保存団体の活動に寄付されており,観光客による何億という消費がこの祭の維持に貢献しているといって良いでしょう.広く資金を募るために,最新鋭のサービスであるクラウドファンディングを活用して山鉾連合会が資金調達を行ったというニュースは,記憶に新しいところです.

しかしながら,文化財を利用して闇雲にお金集めに奔ることを良しとしない意見も少なからず存在するようです.文化財の保護を役割とする学芸員文化財を観光資源として活用することを阻んでいる,として揶揄した某大臣が槍玉に挙げられたことも記憶に新しいでしょう.たしかに大臣の表現には問題がありますが,のちにデービッド・アトキンソン氏が擁護しているように発言の意図は的を射ているでしょうし,「文化財を活用していくことに消極的な人たち」の存在が確からしいことが,これをきっかけに世間に共有されたことは怪我の功名といってもよいでしょう.

 

おわら風の盆の事例

とりわけ,経済成長著しい時代を過ごしながら地元の祭を伝承してきた担い手にとっては,祭を見世物にしてお金を稼ぐことは必要に迫られるものでは無かったので,これを卑しい行為として避ける風潮が根強いのではないかと思います.実際,下記のブログ記事では,富山の八尾で受け継がれている「おわら風の盆」を巡って,"自分たちのための文化"と"観光客のためのもてなし"とのはざまで人々の思いが揺れていることが紹介されています.

祭事と見世物の間に - Living, Loving, Thinking

鹿児島市などから来た60~70代の女性グループは「ケータイの時代だし、もっと細かい進路を案内してほしい。見る人に喜んでもらってこその、伝統でしょ」。遠くから高い料金を払って訪れたツアー客には特に不満が多い。

一方、地区をまとめる男性(47)は「自分たちのための伝統だった踊りが、『見せもの』になりつつある。文化を『見せてもらう』という姿勢で来てほしい」と反論する。

 

たとえ誰にも見られていなくてもやり切るプライドは忘れるな

両者の主張を両立させることに加え,地域を維持していかなければならないという条件も加わるということを考えると,これは非常に難しい問題だと思います.これから,地方の観光地のほとんどはこの究極の問題を避けて通れなくなることでしょう.

それくらい重大なテーマなのだから,詳しい人達はとうの昔に議論を深めているようで,ネットサーフィンしてみると20年以上前から論じられていることが確認できました.

俵木 悟(1997)「民俗芸能の実践と文化財保護政策」

この中では,岡山県の民俗芸能である「備中神楽」の観光資源化が批判される要因が以下の通りまとめられています(P52付近)

  • 見世物としての時間的な制約上,本来の演目を短縮せざるをえない
  • 神事としてのストーリーを無視して,派手な演目が選ばれてしまう
  • 未熟な演者であっても,大勢を前にした舞台に出る機会が増える
  • 審美眼を持たない観客による安易な評価に晒されてしまう

とはいえ,こうした問題意識が生まれることで,担い手が自発的に文化を守るためのイベントを作り出すという副作用・相乗効果も期待されるようです(P53付近).諸刃の剣かもしれませんが,こうした葛藤を乗り越えていくことが,自分たちの民俗芸能の本質に迫る助けにはなると割り切るのも,ひとつの考え方といえそうです.

ちなみにこの論文では民俗芸能の(普遍的な)本質についても触れられています.その中でも,見世物との違いを決定付ける要素として挙げられているのは「目的は行うことであり,鑑賞は結果にすぎない」ということです.たとえ観客が一人もいなくても執り行われるのが,"ホンモノ"の民俗芸能とも言えます.

この本質を見失わない範囲で,得られる収入を得て,その範囲で地域を維持していけば,自分たちの文化を蔑ろにすることにはならない,という大前提を明示的に共有することが,地域とその文化を維持していくうえでの大きな一歩になるのではないかと思います.これを曖昧にしたり,「金儲けは粋じゃない」と「稼がないとコミュニティが消失してしまう」という意見をぶつからせて極論に走っても,答えを出せないままいたずらに時が過ぎてしまい,いずれその地域も文化も消滅することになるでしょう.

 

お互いをよく知ることに尽きる

とまぁ概論はこのように整理できるわけですが,これでは個々人の心構えに頼る部分が大きく,持続可能な解決策とはいえません.そこで,なにかシステマチックに問題を解決できる方法を編み出すことこそが,地域の観光を包括的に取り扱うDMOの役割なのであって,知恵の絞りどころ(今回の本題)です.

前置きが長くなったので結論から言うと,民俗芸能を観光資源にして稼ぐための究極解は「サービス・ドミナント・ロジック」に見出すことができます.もう少し分かりやすい言葉で言えば「価値共創」,極端に言うなら「一見さんお断り」です.(経営やマーケティングに詳しい方にとっては,なんら新鮮味のない答えかもしれませんが)

たとえばさきほどの富山の事例で言うなら,道案内が不十分だと文句ばかり言う人に来てもらうよりも,ならばいっそのこと地図を作って他の観光客にも配ることでその観光地の価値を高めようと考えてくれる人を作れば良いのです.

これはただ「客を選べばよい」というわけではありません.自分たちの芸の価値は,自分たちから一方的に発信されているわけではなく,それを評価してくれる相手との関係のもとで決まるという順序で考えることが重要です.そして,そういう客かどうかを見極める,そういう客でなければたどり着けない仕組みとして長らく受け継がれてきたのが紹介制会員制度,いわゆる「一見さんお断り」です.

もちろん,なにもかも紹介制にしなければならないわけではありませんし,現実的には難しいでしょうから,随所でこの考え方を用いて観光客との関係を作れるような企画を考えていくということになります.一方で,残念ながらそこから弾かれることになってしまう人たちの不満が募らないように気をつけなければなりません.誰か紹介すれば割引,みたいな安易な発想も危険です.

結局は,地元も観光客もお互いをよく知るということに尽きるのかもしれません.お祭が無い時期にも来てもらって,じっくりお互いを知る場を設けることができれば,マナー悪く振る舞うようなことは無くなるでしょうし,芸を見せる相手がよく知った人たちであれば見世物に成り下がったと感じることも無くなるでしょう.

まぁそこまでいくと,もはや観光ではなく知人訪問の域に達しているかもしれませんが,観光の究極的な目標ってそういうこと(遠くの人と友達になること)なんでしょうね.

 

余談

地域観光の成果指標としてリピーター率が設定されることがよくありますが,今回の考察を踏まえると,そのリピーターが価値共創に貢献してくれているリピーターなのか,旅行先で知人と呼べる関係の人がいるのか,といったところまで見極めていかないといけないんじゃないかという気がします.

旅行中に現地で仲良くなった相手ができたかどうか,みたいなアンケートしたら面白そうですね.仲良くなるといってもどういう尺度で評価するか難しいし,とくに京都の場合は心を閉ざしたり開いたりの基準が極端な人が多そうなので,まじめに研究したら論文一本かける笑

観光客の地方分散は進んでいるのか?

縁あって,来週とある学会で発表する機会をいただくことができました.
それで,いろいろと分析を進める中で,ふと疑問に思ったことが.

旅行先の格差って広がってるの?縮まってるの?

実感としては,訪日客全体が増えている割には,京都への観光客は伸び悩み始めているし,香川とか飛騨高山とか観光客急増しているって話も聞くので,格差は狭まってるのかなぁという印象です.

格差の広がりを評価する手法に,ジニ係数というものがあります.もともとは貧富の格差を定量的に評価するために開発されたものです.概要は下図のとおりで,ジニ係数が大きいほど格差が大きいということになります.

「ジニ係数」の画像検索結果

 

この考え方を利用して,観光庁の宿泊旅行統計をもとに,都道府県別の延宿泊客数でジニ係数をざっくり計算してみた結果が以下のとおり.予想に反してジニ係数は増加傾向,すなわち格差は広がっているという結果となりました.

 

  • 伸び悩んでいるといっても,それはごく一部の地域であり,都道府県単位で比較すると,まだまだ人気観光地を抱える都道府県の成長のほうが他を上回っている
  • 都市別で計算すれば,また違った結果になるかもしれない

 

もともとは,格差が狭まりつつあり競争が激しくなるという文脈にしようかと思っていたんですが,格差が広がっても人気観光地同士での競争が先鋭化するだけな気もするし,観光地の競争モデルってかなり複雑なのでなんとも言えないのかぁ,とモヤモヤ.

また,海外都市との競合の議論もあります.航空ネットワークの発達や市場の拡大,ICT技術の普及などによって,これまでマイナーだった観光地にも人が流れるようになった一方で,新興国のビギナー旅行者はこぞって定番観光地に押し寄せているので,評価が難しいように思います.

ビギナーもリピーターもごちゃまぜにして評価しても結論は出ないので,同じ人の旅行先の選択がどういう風に変わっていくのかであったり,京都という旅行先が比較される相手がどう変わってきているのか,という切り口で調べたほうが良いのかもしれませんね.

ということで,特に結論はなく,問題提起するだけの記事で恐縮です笑
どなたか,参考になる文献とかあれば教えていただけると嬉しいです.