福岡県民の国内旅行先を月別に調べてみた

今回は、京都よりも西側のマーケット代表格となる福岡県民の2016年月別市区町村別の旅行先について、観光予報プラットフォームで集計してみました。慣れてきたのはいいけど、徐々にデータ量が増えてきて処理が重くなってきました。

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国内旅行先推移.xlsm

別府は2月が閑散期?

ゴールデンウイークの需要がそれほど大きくなく、7月~12月が高水準で推移しています。年の前半では3月にピークがありますね。スキー人口が少ないから、冬場に旅行しなくなるのと、3位にランクインしている別府市への宿泊者数が大きく寄与しているのが分かります。

4月は熊本地震の影響が大きいと思いますが、2月の需要が少ないのは意外です。寒いのが嫌であたたかい宮崎へ遊びにいく習慣でもあるんでしょうか。そのわりには8月も宮崎旅行は多いみたいです。

別府市の次に多いのは、なんと福岡県内の福岡市でした。県内からなら日帰りの人が多いと思っていましたが、想像以上です。この他にも、九州の都市が多数ランクインしています。やはり、本州から海を隔てて離れていることの影響は大きいですね。

温泉がない観光地は4~6月がチャンス?

京都への旅行は、4~6月と、9~11月が多くなっています。4~6月は地震の影響でしょうか?おでんが一番売れるのが寒くなり始める9月であるように、あたたかくなり始める4~6月に温泉需要が減って、消去法的に別ジャンルの観光地である京都が選ばれているのかもしれません。だとすると、温泉資源に乏しい京都は6月が閑散期なので、九州のマーケットに対しては紫陽花ゴリ押しが良さそう。

このあたりは、いずれ2015年のデータも追加して分析してみたいと思います。短いですが、今回はこのへんで。

石川県民の国内旅行先を月別に調べてみた

今回は石川県民の国内旅行先を観光予報プラットフォームで集計してみましたー。「関東への旅行」と「関西への旅行」が競合する地域という意味でのチョイスです。愛知県でも良かったんですが、愛知県はビジネス需要が強そうなので後回しにします。

前回は集計ロジック組むのに時間かかりましたが、一度データベースができれば、割りと簡単に他の都道府県に拡張できそうなので、少しずつ増やしていこうと思います。

ではさっそく、2016年の石川県民の国内旅行先は以下のとおり。(太字はBEST5です)

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国内旅行先推移.xlsx

全体の月別傾向

東京都民は8月が宿泊旅行のピークでしたが、石川県民は5月と8月になだらかなピークがあるようです。おそらく石川県のような分布のほうが一般的なんじゃないかと思います。

冬場に需要が落ち込むのは、やはり雪の影響で遠出を控えているのでしょうか。日帰りスキーに需要が移っている可能性もあるかもしれません。

旅行先の傾向

旅行先トップは大阪市のように見えますが、実際は東京です。集計の都合上、東京は特別区ごとに集計しているので、港区や中央区などを足し上げると圧倒的に東京23区が最多となります。東京都への宿泊者は毎月4~5万人で、浅草やスカイツリーがある台東区に宿泊している人が3000人前後なので、観光需要はそれほど多くないと考えられるでしょうか。

2位は大阪市で、シェアは5%くらいですね。東京同様ビジネス需要と、USJによる集客が牽引していると考えられます。2月の大阪市への宿泊者数が、石川県民全体の宿泊者数と比べて少なくなっているのは、スキー旅行にシフトしているか、もしくは加賀や七尾などの温泉旅行にシフトしているためでしょう。このデータは2016年のみの数値ですが、北陸新幹線開通以前であれば、もう少し大阪市のシェアは増えると思います。

3位は浦安市。ディズニーですね。

4位が京都市。紅葉シーズンに順位があがるのはわかりますが、5~7月に多いのは意外。修学旅行?やはり、冬場の集客が課題。

5位は加賀市。七尾やあわらなど、周辺の温泉地が上位に登場しているのが特徴。

石川県民は軽井沢への避暑旅行が好き?

あと気になるのは、中央区軽井沢が9月に急増している点。ここは軽井沢に注目して、軽井沢への宿泊者の推移を居住地別に見てみましょう。

当然、軽井沢への旅行は一都三県(東京、埼玉、千葉、神奈川)からが圧倒的に多いですが、富山や石川が上位にランクインしています。そして、一都三県や愛知、大阪は8月がピークになっている一方で、石川県は9月にピークが来ている点で特異です。(Googleスプレッドシートの機能制約のせいでわかりにくいですが、折れ線にカーソルを合わせると数値が表示されるので読み取れると思います)。

この理由を知りたいときに属性データとクロスした分析機能が貧弱なのが、観光予報プラットフォームの残念なところ。苦し紛れに、以下のような集計をしてみました。

8月は家族連れが多いようです。もしかすると、石川県民は別荘持ってる人が多いんでしょうか?首都圏のひとたちがいなくなって落ち着いた9月に宿泊単価が下がったのを狙って、北陸からの送客が増えているとも解釈できるかもしれません。

 

あと、3月に横浜への旅行が増えていたり、2月に福岡への旅行が増えているのも気になります。ジャニーズのコンサートの影響でしょうか。調べ始めるとキリがないので、横浜や福岡の分析をするときに、余裕があれば深掘りしてみたいと思います。

今回はこのへんで。

東京都民の国内旅行先を月別に調べてみた

旅行者数の分析はどうしても自分たちの町にばかり注目してしまいがちですが、当然旅行者は他の地域にも旅行しているので、市場シェアをどのくらい取れているのかを把握することが重要です。

これまでの統計では都道府県単位でしか把握することができなかったので、ちゃんとした分析はされてきませんでしたが、観光予報プラットフォーム(https://kankouyohou.com/)が整備されたことで、市区町村単位で分析することができるようになりました。

とはいえ、観光予報プラットフォームはデータをエクセルで出力する機能がなく、APIも配信していないという舐めた仕様なので、ちゃんと活用しきれていないように思います。そこで今回は、試しに東京都民が2016年のあいだに宿泊した場所について、月別にデータを抽出して集計してみました。

結果は以下のとおりです(太字は各月のBEST5)。

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元データ、ご自由にご利用ください
観光予報プラットフォーム_国内旅行先_東京都.xlsx

需要のピークは8月

東京都民は年間で延べ6,632万人が宿泊旅行をしています。最も需要が多いのはお盆シーズンの8月です。これが帰省需要によるものなら、5月(ゴールデンウイーク)や12月も多くなるはずですが、5月も12月も他の月と比べてそれほど多くはなっていません。おそらく、学校が夏休みに入ることで家族旅行が増えやすくなることが原因なのではないかと思います。

他の都道府県だとまた違う傾向があるかもしれませんが、もしこれが全国的な傾向だとするなら、季節波動を抑えるために、フランスみたいに学校の夏休み期間を地域別に分散させるような制度があってもいいんじゃないかと思います。

行き先No.1は大阪市

都民の宿泊旅行先No.1は一年を通して大阪市でした。このデータにはビジネス客も含まれていますし、大阪出身の東京都民による帰省需要も大きく、このような結果となっているのでしょう。

なお、上記の表には示していませんが、大阪市のなかでも此花区で宿泊している人が最も多かったことから、あきらかにUSJの需要が大きいことが分かります。3、8、9、12月の数値が大きいので、ここでも小中高生の休暇期間が影響しているように考えられます。

冬の京都が苦戦している理由は、ガーラ湯沢

第2位は京都市でした。意外と5月や12月の需要が大きくなっています。理由は謎です(笑)。もしかすると修学旅行が影響しているかもですが。

一方で、1,2月の宿泊者数が大きく落ち込んでいます。いまでこそ2月はレストラン・ウィンター・スペシャルと銘打って、食のキャンペーンを展開している京都市ですが、この時期はコンテンツが少なく昔から苦戦しています。

そうでなくても、この時期の東京都民は湯沢町への旅行が非常に多くなっており、スキー・スノボに夢中であることがよくわかります。やはり、新幹線で2時間以内に到着でき、駅からゲレンデが直結しているガーラ湯沢の集客力は半端じゃないようです。

冬の京都への旅行者を増やすためには、このスキー客層を無視することはできなさそうです。雪山も温泉も無い京都にとっては非常に難しい課題です。

昔ながらの観光地が上位に

名古屋、福岡、仙台などの主要都市はビジネスや帰省需要によるものだとして、それ以外で上位にランクインしたのは熱海などの伊豆方面と、日光・軽井沢などの北関東方面でした。どちらも景勝地や温泉で有名な昔ながらの観光地ですが、伊東や下田などの地域までランクインしているのは、関西人にとっては意外な結果でした。

ただ、それ以上に意外なのは、港区(東京都)がランクインしていること。さすがに、ラブホテル需要までデータには反映されてないと思うんですがねぇ笑

まとめ

  • 観光予報プラットフォームを使えば、市場シェアを把握することができる
  • 学校の休暇期間が与える影響は大きい
  • 京都の冬は、スキー客層の切り崩しが課題
  • 意外と人気な伊豆半島

投稿するネタがないときは、こんな感じで他の地域についても分析していこうと思います。

いま必要な観光消費のデータとは

さいきん投稿サボりすぎなので、短いですが少しだけ思いついたことを。

観光に関するデータは捉えにくいとはいいつつも、ここ最近で統計データが随分整備されました。国が公表しているものをざっと挙げただけでも、これくらいはあります。

1.出入国管理統計
2.宿泊旅行統計
3.旅行観光消費動向調査
4.訪日外国人消費動向調査
5.観光地域経済調査
6.航空旅客動態調査
7.都道府県間流動表
8.RESAS

さらに、WiFiが普及してきたこともあって、旅行者の位置情報を捉えられるようになってきました。

次の課題は、お金の流れを正確に捉えることだと言われています。上で挙げた調査でも消費額は把握されてますが、出国前に思い出しながら答えてもらう方式なので、正直言って正確とは言えません。

いずれ、ICカードやクレジットカードの履歴から把握していくような仕組みが整備される日が来るのが待ち遠しいです。ただ、そうした履歴データが普及してもなお、踏み込むことが難しい領域があります。

購入機会損失の把握

それは、「買いたいと思ったけど何らかの理由で諦めた」というシチュエーションの発生です。まぁ、これは観光に限ったことではないんですが、たとえ全ての消費者に電子通貨が普及したとしても、購入してくれないことには記録は残らないので、機会損失が発生してしまっていることを見過ごしてしまうのです。お金の流れの次は、気持ちの流れ、です。

購入履歴データは、そう遠くない未来に把握できるようになると思いますが、機会損失データを整備することはまだ誰も手を付けられていないんじゃないかと思います。そして、その機会損失を回避することこそが、マーケティング上最も重要な観点なのです。

全員の脳にチップを埋め込んで潜在意識を吸い出すなんてこともできなさそうなので、意外と紙アンケートやモニターツアーなどの古典的な手法で、「なんで買うの諦めたんですか?」って聞いてみるのが良いのかもしれません。もしくは、通販サイトの閲覧履歴をきっちり分析することが近道にはなるかもしれません。

そう思うと、まずは個別店舗に海外向け通販システムを導入してもらって(DMOがそういうシステムを用意して)、気になる商品はその場でブックマークできるようなインフラを整えればいいのかなー、なんて思ったり。

京都の客室稼働率が高くなったことで、日帰り客は増えているのか?

2016年の訪日外国人数は2400万人(前年比約22%増)を超えました。2020年には4000万人を目指すことになっています。順調に増えているようですが、これが各地域の旅行に与える影響は様々で、国全体と同じように成長しているとは限りません。

とくに京都の場合は宿泊施設の供給が追いついていないので、京都には行きたいけど泊まれないから日帰りで、という選択が日本人のあいだで増えているのではないかという声も聞かれます。京都文化コンベンションビューローが発表している京都市内のホテル統計によると、客室稼働率は2016年も高水準をキープしていることがわかります。

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そこで今回は、観光客数のデータをあらためて整理しつつ、京都への日帰り客が増えているのかどうかを検証してみたいと思います。

観光客数の数え方

まず、国全体の観光客数と、地方の観光客数の数え方が色々あって、意外と複雑な関係にあることを確認しておきましょう。

旅行者は、宿泊客と日帰客に大別できます。これらを合わせて、その観光地に入ってきた人という意味で、入込客と呼びます。

当然ですが、入込客数は、国、都道府県、市町村、観光地点など、どの範囲を観光地とするかによって変わります。

そして一番ややこしいのが、ダブルカウントのルールです。
実人数…同一人物が年に何回その観光地を訪れても1人としか数えない
延人数…同一人物が年に2回訪れた場合は2人回と数える
延泊数…同一人物が年に2泊3日の旅行を4回した場合は8人泊と数える

これらの区分を、2015年のデータについて調べてみると、下表のようになります。(海外旅行は含んでいません)。見つけきれてなかったり、うまく計算すれば出せる部分があったらすみません・・・

(2015年 単位:百万)

    京都市
    実人数 延人数 延泊数 実人数 延人数 延泊数
日本人 入込 89.2 604.7 735.5      
宿泊 78.8 313.0 438.5   10.5  
日帰 61.3 291.7    
外国人 入込   19.7        
宿泊   42.2 65.6   3.2 7.3
日帰        
合計 入込   624.4     56.8  
宿泊   355.2 504.1   13.6 20.9
日帰       43.2

訪日外国人2000万人目前!と言っていたのは、太字で示した部分(1974万人)です。法務省出入国管理統計をベースに、JNTO(日本政府観光局)が集計発表しています。ですが、JTB総研が加工・公表しているエクセルデータのほうが便利なのでオススメです(画面を下の方へスクロールしていくと、右下にポップアップでダウンロードの案内が現れます)。

国全体の日本人の旅行動向は、旅行・観光消費動向調査で把握することができます。インバウンドの影に隠れてしまっていてあまり注目されていませんが、このデータ知らなかったら観光業界ではモグリと呼ばれてもしかたないってくらい重要なデータです。

外国人の宿泊客数は、宿泊旅行統計で発表されています。国籍別、都道府県別のクロス集計も用意されているありがたいデータですが、場合によっては従業者数10名以上の施設のみしか対象にしていない集計があるので注意が必要です。

あと、この統計では、延人数のことが実人数と表記され、延泊数のことが延人数と表記されています。非常にややこしく、間違えやすいので注意が必要です。

京都市のデータは、京都市が実施している京都観光総合調査から把握することができます。国のような入国管理ゲートがあるわけではないので、入込客の把握は難しいのですが、それでも京都は様々なデータをもとに推計を行っており、データは充実しているほうです。

京都市の観光客数の変化

それでも、外国人客が増えたことで日帰り客が増えている、という仮説を検証するには材料が足りません。有償であれば、GPSWifiを活用したビッグデータを駆使することで把握できるようにはなってきましたが、無償ではまだ難しいというのが正直なところです。

そこで、観光地の範囲を「京都市」ではなく「京都府」に広げてみることにします。都道府県別であれば比較的利用できるデータの幅が広がり、仮説を検証することができるようになるからです。また、京都府の観光の大部分は京都市が占めているので、だいたい京都市の傾向をつかむことはできます。

まず、訪日外国人消費動向調査で、外国人の都道府県別訪問率が分かります。これによると、2015年は訪日1974万人のうち24.8%が京都府を訪れているので、京都府の外国人入込客延人数は約482万人となります。

2015年の京都府における外国人宿泊客数は、宿泊旅行統計によると約247万人となっています(京都市の統計では316万人なので過小推計)。入込482万人から宿泊247万人を差し引くと、日帰り(京都に来たけど宿泊しなかった外国人)は、約235万人となります。

京都府を訪れた日本人については、宿泊・日帰りともに宿泊旅行統計で把握することができます。これらのデータを2014年から3年間に渡って整理すると、以下のようになります。なお、2016年のデータは、宿泊旅行統計が10月まで、訪日外国人消費動向調査が四半期別までしか公表されていません。宿泊旅行統計は12/10倍で拡大推計、訪日外国人消費動向調査はサンプル数で加重平均して京都府の訪問率を算出しています。

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全体としては少しずつ増えています(28.7→30.6→31.1)。なお、京都市の入込客数は統計上5500万人を超えており、上記の数値は過小となっていますが、これは調査手法や定義が異なることによるものと考えてください。

2016年の日本人宿泊客が大幅減っていますが、これはまだ11月の紅葉シーズンが含まれていない段階での拡大推計であるためだと考えられます。そうじゃないと、外国人と合わせた宿泊客数が2015年より減ることになってしまうので不自然です。とはいえ、日本人による日帰りの比率が上がっている傾向であることは確からしいです。

外国人のほうも宿泊客数は微増で、日帰り客が大幅に増える結果となっています。実際、冒頭のコンベンションビューローのデータによると、台湾からの宿泊客数は前年同月比割れが1年近く続いていることがわかります。

この理由としては、宿泊単価が上がっていることで宿泊しにくくなっていること、他地方へ流れてしまっていること、あるいは統計から漏れやすい小規模宿泊施設や民泊に流れている可能性も考えられます。日帰り客は、滞在時間が限られてしまうことから、どうしても訪問スポットが有名所に限られやすいと考えられます。

高級路線を狙いすぎるがあまり日帰り客によって観光地を混雑させてしまうぐらいなら、安くてもいいからゲストハウスを整備して京都市内で宿泊してもらったほうが、需要の分散、地域経済の循環の両面で望ましいのではないかと思います。もちろん、「安かろう悪かろう」という言葉があるので、観光地のブランドを損なうようなサービス提供にならないようにすることとのバランスは見極めなければなりません。

ということで、かなり乱暴な推計でデータ間の整合性も怪しいものの、一応公表データを組み合わせることで仮説を検証することができました。

まとめ

  • 観光客数の定義はややこしいので気をつけよう(単位に注意)
  • 既存の統計を組み合わせることで、外国人の日帰り客を推計することができる
  • 宿泊需給が逼迫している京都は、日帰客が増えている可能性が高い

京都市内観光地の訪問特徴をコレスポンデンス分析で可視化してみた

これまでの記事アクセス数を見ると、データに関する記事のほうが受けがいいらしいことが分かってきました。今回は、公表データから比較的簡単にできるコレスポンデンス分析を使って、旅行者の属性別に市内訪問地の傾向を可視化してみたいと思います。

データの出典:平成27年 京都市観光総合調査
分析ツール:RStudio(使い方は検索すれば腐るほど情報がでてきます)
ソースコード(これだけです。読み込むCSVは左上に寄せて、行列ともに名前をつけましょう)


library(MASS)

x <- read.csv("destination_corespondence.csv", header = T, sep=",", row.names = 1)
cor <- corresp(x,nf=2)
cor
biplot(cor)

日本人の性年代別訪問傾向

まず対象とした元データは、京都を訪れた日本人の性年代別の訪問スポットです。若年層は清水・清水の訪問率が異常に高いことがこれを見ただけでもよくわかりますね。

 

これを、コレスポンデンス分析にかけると、以下のグラフのようになります(わかりやすさのために、Excelで作成しました)。点と点の距離が近いほど、関係性が強いくらいに捉えれてもらえればOKです。

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視覚的に処理をすると、以下のような考察が簡単にできます。数値の羅列だけでは見えにくい相対的な関係が把握しやすくなります。

  • 男女差はあまり大きくない
  • 高齢者は高雄や大原などマニアックなスポットを、比較的訪れている
  • 若年層は清水・祇園、伏見、金閣寺方面。太秦・花園に近いのは、修学旅行で映画村を訪れているからか?
  • 30代は繁華街を訪れる傾向が強い。

外国人の国籍別訪問傾向

次は外国人です。清水寺金閣寺が人気で、台湾人は行動範囲が広いようですね。

続いてコレスポンデンス分析。

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韓国が随分外れていますが、これはほとんど清水寺しか訪れていないからですね。おそらく滞在日数が短いので(下手すると日帰り)、訪問できる箇所が限られていて、有名所に絞られてしまうのでしょう。

中国や台湾が位置する右下側は八坂や伏見ということで、朱塗りの派手な感じが好まれているように解釈できます。

一方で欧米系は南禅寺銀閣寺、龍安寺など、いわゆる「禅」が人気なようです。

まとめ

既存の統計データからでも、ほんの数行のプログラムで可視化できて、市場の分類に役立てることができます。

宿泊予約市場の最適化問題~稼働率100%に向けて~

去年の京都観光は、一時期の勢いは無くなったとはいえ、11月の主要ホテル稼働率が93.1%を記録し(京都文化交流コンベンションビューロー調べ)、依然として需給は逼迫する一年となりました。

この稼働率、90%を超えれば満室(ほぼ予約不可能な状態)と言われていますが、数字通りに捉えると、どんなに頑張っても10%は無駄が発生してしまっているともいえます。もちろん、宿泊施設側のオペレーションの都合があったり、数字には現れない部分の存在が影響していたりして、実質的には100%なのかもしれません。

その真偽は別として、今日はこの稼働率を100%に近づけることについて考えてみたいと思います。

空室情報の提供

まず前提として、部屋在庫を市場にしっかり載せることが必要です。旅行者は様々な予約サイトを利用することができますが、サイトによって卸されている部屋数やプランは異なるので、あるサイトでは満室なのに、別のサイトでは空きがあるなんてことはよくあり、これが機会損失を生んでいます。

これらのサイトを一括検索できるTrivagoなどのメタサーチサイトも普及しましたが、日程が迫ってきて宿泊施設側が予約サイトから部屋を自社サイトだけに引き上げてしまったりすると、空室を探し出すことは極めて難しくなります。

この問題を解消するために、観光庁では「宿泊施設空室情報検索サイト(HVSS:Hotel Vacancy Search System)」の実証実験を開始しました。正直言って、民間の予約サイトが存在するにも関わらず、税金を投入して手数料分を補填して行政が予約サイトを作ることにどこまで意味があるかは疑問です。外資企業への富の流出を防ぐという理屈はあるのかもしれませんが、付加価値を産まない事務職員やSEの肥やしになっているだけだという気がしてなりません。

基本的には、予約サイトを積極的に利用することを促したり、わかりやすい予約画面を構築するようにガイドラインを作成していくことが、行政やDMOの役割ではないかと思います。あとは、誰か、各宿泊施設の予約画面をクローリングして空室情報引っ張ってくるようなサービス作ってくれればいいのにね(笑)

どうせなら、宿が見つからないときは少し離れてるけど実は便利で空いている地域があることを宣伝して、機会損失を避けるような広報にお金を使ったほうが、稼働率の100%化に繋がるのではないかと思います(京都の場合は、大津あたりをアピールする共同広告を予約サイトに掲載するとか)。

事前決済でノーショー対策

予約は成立しているのに当日宿泊に来ない(いわゆるノーショー)客の存在が、稼働率を下げていることは間違いありません。とくに外国人旅行者は、クレジットカードによる事前決済が難しかったり、言葉が通じないから宿泊施設への連絡を避けてしまったり、ノーショーが発生しやすいため、これから外国人旅行者比率が高まる日本ではノーショーを減らすことが大きな課題となります。

ノーショーを回避するためには、事前決済を導入するか、事前に顧客にこまめにアプローチするしかないでしょう。事前決済はExpediaなどの予約サイトを利用すれば実現できますが、手数料を取られてしまうという問題があります。最近は、自社サイトで予約システムを簡単に構築できるようになりましたし、apple payみたいな電子決済がかなり普及してきたので、手数料を抑えられるようにはなってきました。近いうちにbitcoinなどの仮想通貨が定着すれば、さらに簡単に事前決済ができるようになるでしょう(現状、bitcoinは価格が変動しすぎるので決済単位の設定が悩ましいですが)。

予約権売買市場の構築

ライブチケットの転売が問題になったことは記憶に新しいですが、宿泊予約にも同じような売買市場が形成される可能性はあります。実際、予約を転売できるサイトは既に存在しています。

宿泊予約の権利売買サービス「Cansell」

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https://cansell.jp/

ライブチケットの転売との決定的な違いは、希少価値分を上乗せして高値で売るのではなく、キャンセルしたいけどキャンセル料を取られてしまうから損失を回避するために安値で売るためのサービスというところです。

着地側としては予定通り宿泊料金を得ることができますし、来れなかったはずの旅行者が来てくれるので、宿泊以外の消費も発生するというメリットがあります。もちろん、これによって直接的に稼働率が上がるわけではありません。しかし、急遽予定が入ることを恐れてギリギリまで予約を遅らせてしまうことで予約するタイミングを逃してしまうようなことが減り、間接的に稼働率が上がると考えられます。

ただ、いま誰が予約権を持っていて、当日誰が誰の名義で泊まりに来るのかを把握することが難しくなることが懸念されます。「Cansell」はそのあたりの課題をある程度解消する仕組みを用意した点で画期的なのですが、流通量が増え始めるとトラブルが発生してしまいそうな気もします。

とはいえ、この予約権売買市場が成立すれば、宿泊施設の価格決定権が消費者側に移るので、宿泊施設の実力を把握しやすくなるという意味で、マーケターとしては興味深いです(この記事のテーマとは逸れますが)。

まとめ

稼働率を上げるためには、大きく3つのポイントがある。

  • 在庫を市場に載るようにする
  • 事前に決済を確定させてしまう
  • 旅行者の予約リスクを減らすための予約権売買市場の形成

まぁこれ以外にも、旅行者の全てのニーズに対応できるように幅広い価格帯を用意することや、正確な需要予測に基いて柔軟に供給できるように工夫することも考えられますが、客室という不動産でこれらを実現することはかなり難しいので、上記の3点をポイントとして上げました。